絶滅危惧種 PR

【クロサイ】特徴や生息地・絶滅危惧種に至った経緯を紹介

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「サイは動物園で見たことあるけど、クロサイってどんな動物?」

「クロサイは絶滅危惧種なの?」

「野生のクロサイはどこにいるの?」

サイは、大きな体と顔の真ん中にある角が印象的な野生動物です。

動物園でお馴染みかもしれませんが、野生ではアフリカのサバンナに生息しています。

IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでCR(Critucally Endagered:近絶滅)に記載されており、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いとされている種です。

最後まで読んでいただくと、クロサイの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「クロサイ」とは

クロサイ(black rhinoceros)は哺乳綱奇蹄目サイ科クロサイ属に分類され、クロサイ属はクロサイ一種のみで構成されています。

生息地はアフリカ中部から南部にかけて、熱帯から亜熱帯に及ぶ地域です。

クロサイは生息地により次の亜種に分類されています。

  • ミナミクロサイ (D.b. minor / South-central black rhinoceros)
  • ヒガシクロサイ (D.b. michaeli / Eastern black rhinoceros)
  • Diceros bicornis occidentalis (South-western black rhinoceros)

サイ科にはクロサイの他にシロサイ属シロサイがいますが、これらはよく対比され紹介される2種です。

「クロサイ」の特徴

クロサイはシロサイに比べて小型ではあるものの、体長2.9〜3.1m・肩高1.5〜1.8m・体重0.9〜1.3トンで、大きい個体では1.8トンに達する大型の草食動物です。

頭部と耳はシロサイよりも小さく、額がはっきりとしており、シロサイの口のかたちが平らなのに対しクロサイは口の先端がとがっています。

体の大部分には毛がなく裸出しており、被毛があるのは耳の先端と尾の先端だけで、皮膚は厚いですが乾燥に弱くデリケートです。

そのため、保湿や寄生虫を防ぐため泥浴びや水浴びを好み、もともとの体色は灰色ですが黒色・茶色・赤褐色など土壌の色を帯びていることがあります。

頭部には前後に角が2本あり、人間の爪と同じようにケラチンという物質でできていて、束になった毛のような繊維状の構造です。

前角は40〜50cm・後角は20〜30cm程度で、角は一生伸び続けるので木や岩を使い削って整えますが、長い個体では前角が1〜1.3m・後角が50cmに達することもあります。

視力はあまりよくありませんが嗅覚と聴覚は鋭く、周囲の変化に敏感です。

クロサイは、肉食獣も恐れるほどの大きな体と角をもつ草食動物といえます。

「クロサイ」の暮らし

クロサイは基本的に単独で生活し糞や尿を使って縄張りを主張しますが、雌は子どもと一緒にいることもあります。

クロサイはミネラル補給として岩塩を舐めるために遠くに移動することも珍しくありません。

地面に体をこすりつける行動は、暑さをしのぎ皮膚の寄生虫を取り除くためと考えられます。

虫を食べようとするサギなどの鳥類と一緒にいる風景がお馴染みです。

クロサイの視力は弱く、30メートル以上離れると物の識別ができないと言われています。

しかし、音には敏感で相手を確かめる前に突進する傾向があり、攻撃的な性格です。

大きくて重たそうな体に似合わず運動能力は高く、藪の中を時速45kmで走ることができますが、急に止まることは苦手です。

肉食獣もサイを襲うことはありませんが、幼獣はライオンやハイエナに襲われることがあります。

「クロサイ」の食性

クロサイは草食性で、マメ科の低木を中心に芽・枝・樹皮・果実などを主食とし、刺のあるアカシアなども平気で食べます。

前歯はなく唇で芽や枝をむしり取って口の中へ運び奥歯で左右にすりつぶしますが、奥歯は大きく頑丈で木の枝もかみ砕けるほどです。

シロサイは地面近くの草を食べるために平たく広い口をもつのに比べ、クロサイは木の芽や枝を食べるのに都合がよい自由に動く尖った口をしています。

クロサイの口の形は食性に合わせて進化したものと考えられ、遠くからでもシロサイと判別することができます。

「クロサイ」の繁殖

クロサイは一夫多妻で、繁殖期は生息地によって異なります。

450〜550日の妊娠期間を経て1度に生まれるのは1頭で、出生直後の体重は20~25kg、大きいものでは30~50kg程度です。

子どもは生後三日ほどで母親の後をついて歩くようになり、授乳期間は18カ月程度ですが生後数週間後くらいから草も食べるようになります。

子どもが親元を離れるまで2~4年かかりますが、それまでの間に母親は次の子どもを出産するのが普通です。

子どもは5~8年で性成熟し、単独行動する中で自らのパートナーを見つけて繁殖します。

野生での寿命は25~35年程度と言われています。

「クロサイ」の分布・生息地

クロサイはアフリカ大陸の熱帯から亜熱帯に及ぶ地域に生息しています。

かつては、サハラ砂漠以南のコンゴ盆地を除く地域に広く分布し、サイの中では最も数が多いといわれていました。

しかし、100年ほどの間に生息地は狭められ、かつて生息地だったカメルーン・チャドでは絶滅し、エチオピアでも絶滅したと考えられています。

現在の生息地は、アンゴラ・ケニア・ジンバブエ・タンザニア・ナミビア・南アフリカ共和国・モザンビークです。

また、エスワティニ・ザンビア・ボツワナ・マラウイ・ルワンダにも再導入されています。

過去から現在に至るまで多くのクロサイが密猟の犠牲になり、生息地が狭められてきましたが、懸命な保護対策が続いています。

「クロサイ」の生息地

クロサイの生息地は主にサバンナ・森林・藪地などです。

山地の森林にも分布していますが、熱帯雨林には生息していません。

開けたところよりも木々が多いところを好み、行動範囲は食糧事情によりますが133㎢に及ぶこともあります。

クロサイの生息には、食糧となるマメ科を中心とした丁度よい高さの低木が豊富にあることが欠かせません。

「クロサイ」の生息数

クロサイの生息数は、現在約5,500頭と推定されています。

1970年には6万5千頭だったのが12年後に1万頭~1万5千頭に数を減らし、一時は2,500頭にまで減ってしまいました。

これは98%の減少に値します。

その後の地道な密猟対策の成果でゆっくりと個体数が回復しつつあり、2012~2018年の増加率は年率2.5%でした。

個体群モデルによれば今後も徐々に増加すると予想されていますが、危機的状況にあることには変わりありません。

「クロサイ」が絶滅危惧種となった理由

クロサイの生息数が激減した主な理由は、角を狙った密猟です。

サイの角は様々な効能がある万能薬の成分として、医学的には効果が証明されていないにも関わらず古くからアジアで珍重されてきました。

ワシントン条約で取引が禁じられている今でも、中国やベトナムなどでは高値で取引されています。

商取引が禁じられてからは更に希少性が増し、一説では角1kg当たり1万ドルに値し、これは1頭の角で現地の一家族が数年間暮らせるほどの金額とのことです。

角を獲るという目的だけのために膨大な数のサイが殺されてきましたが、密猟は今も続いています。

「クロサイ」の保護の取り組み

クロサイは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでCR(Critically Endangered:近絶滅危惧)に掲載された希少種です。

また、クロサイは希少種保護の国際的な取り決めである「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で付属書Iに掲載されています。

よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

国際的にも保護対象となっているクロサイですが、減少を招いている要因への対策など保護の取り組みについてご紹介していきます。

密猟対策

サイの角を目的とした密猟に従事する犯罪組織はより高度に組織化されるようになり、伝統的な密猟よりも対策が難しくなっています。

ヘリコプターや暗視スコープ、消音器などを装備した銃器など最新装備を駆使して、夜間に警備をかいくぐって密猟が行われているのです。

背景には、訓練された要員を抱える国境を越えた密猟犯罪組織の関与も指摘され、生息地の政府は、密猟者に厳しい罰則を科すなど国をあげて保護の努力を続けています。

多くの保護区では 24 時間体制で保護管によるパトロールを実施していますが、一般的に面積は非常に広大で限られた人員で網羅するのは困難です。

そこで、保護区への不法侵入をリモートで監視するためのサーマルカメラを導入している例もあります。

ナミビアでは警備員として訓練を積んだ地元住民が、南アフリカ共和国のクルーガ国立公園では軍隊を出動させ密猟対策に成功しているとのことです。

また、密猟の対象とならないように獣医師があらかじめサイの角を切っておく「除角」も成果をあげています。

しかし、密猟問題を解決する鍵を握るのは、サイの角を消費しているアジア諸国といえます。

アジアの国々でサイ取引を禁じる法律がきちんと守られるよう、法令順守を確実にする社会の仕組みづくりが資金の投入も含めて必要です。

生息地の拡大

サイはひとつの地域に集中しすぎると生息数が減少に向かう性質があるため、一定の密度を超えた場合には一部を別の場所に移す必要があります。

サイの人為的な移動は遺伝子プールの多様性を確保するのにも有効です。

南アフリカでは、WWF(世界自然保護基金)クロサイ生息地拡大プロジェクト(WWF’s Black Rhino Range Expansion Project)が実施されています。

クロサイの生息地を所有する地域の大地主と協力し、繁殖に適した土地を広げる試みで、すでに100頭近いクロサイが新たな土地に移され繁殖にも成功しているとのことです。

また、ナミビア政府は保護プログラムによって、サイを遠くの農場や自然保護区域に移動させています。

他に、密猟が横行する地域からサイを救出し保護の可能な場所に移すケースやクロサイが絶滅してしまった地域への再導入も有効です。

しかし、全てのサイの人為的移動が上手くいくわけではありません。

専門家・自然保護団体・ボランティア・地域住民などの密な連携が必要なことはもちろん、国家レベルの協力が必要な場合もあるほか、個体保護の面からも細心の注意が必要です。

クロサイの生息地拡大は生息数の拡大につながりますが、失敗を踏まえて知見の更なる蓄積が望まれます。

動物園での保護

現在、世界各国の約70の動物園で200頭ほどのクロサイが飼育されています。

密猟の恐れのある現地から、クロサイを救出して動物園へ移す試みもあるとのことです。

ヨーロッパ圏・アメリカ圏などそれぞれの地域で計画的に動物園での保護増殖が行われ、徐々に成果が出ています。

現在国内でクロサイを飼育している動物園は11園です。

動物園間で相互に協力しながら保護繁殖が計画的に実施されており、遺伝子保存の側面からもクロサイ保護に大きな役割を担っています。

私たちにできること

クロサイは日本の野生動物ではありませんが、同じアジア圏で漢方薬として珍重され密猟の原因になっていることは身近な問題といえます。

「野生動物の違法取引は許されない」という認識を広めていくことは、身近なところからできる取り組みの一つです。

現在、国内では11か所の動物園でクロサイが飼育されており、巨大な姿を間近で実際に見て生態を学ぶことができます。

クロサイを飼育している動物園は次のとおりですが、最新情報はそれぞれの公式サイトでご確認ください。

国内外でクロサイの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも考えられます。

代表的な団体は次のとおりです。

クロサイの生態や生息地について関心をもち情報を得ることが、クロサイを絶滅の危機から救うの第一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。