かつてこの世界には、美しい青い毛並みを持つ、シカのような生き物が暮らしていました。
その名を「ブルーバック」。
アフリカで大型哺乳類として初めて絶滅した動物だと言われています。
かつて彼らの暮らしていた南アフリカには、金やダイヤモンドなどたくさんの資源が眠っており、その開拓の過程でたくさんの動植物が犠牲になりました。
ブルーバックは保護すらされることなく、この地球から姿を消してしまったのです。
今回は、その美しさゆえに身勝手な人間たちに狙われ、絶滅にまで追いやられてしまった悲しい生き物「ブルーバック」について調べてみました。
「ブルーバック」とは
名前について
ブルーバックは、オランダ語で直訳すると「青い鹿」。
ウシ科の生き物なのですが、鹿に似ていることからその名がつけられました。
身体的特徴
ブルーバックはウシ科、ブルーバック属、ブルーバック種の生き物で、ローンアンテロープなどの仲間です。
後方にゆるくカーブした長い角を持ち、体長はオスで250~300㎝、メスで230~280㎝(しっぽ含む)、体高は100㎝前後、体重は160㎏程です。
同じ種の仲間たちと比べると一回り小さく、耳や角も小ぶりです。
その名前の通り、背中側~横腹面は美しい光沢のある青灰色の毛、体の下側は淡い灰色の毛でおおわれています。
房状の毛のついているしっぽは長く、膝まであります。
ブルーバックはきちんとした研究や標本づくりが行われる前に絶滅してしまったため、世界にはたった4体の剥製標本と、わずかな角や骨を残すのみになってしまいました。
その一つはパリ自然史博物館で保管されています。
食事や生態
ブルーバックは完全草食動物で、中~高程度の高さのイネ科の多年草の植物を食べて生活していたと言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。
また、大きな群れは作らず、オスメス一匹ずつのペアか、5~6匹ほどの小さな群れで生活していました。
「ブルーバック」の分布・生息地
彼らは、南アフリカ南部(ケープ地方南部あるいは南西部)の沿岸地域に広がる広大な湿地や、主食となる植物のある草原、山腹の雑木林の開けた場所でのみその姿が確認されています。
特定の草だけを主食にしていたため、生息域が狭く、生活圏はたった20㎞圏内程度だったそうです。
他のブルーバック種の動物と同じように、毎日水を飲むことが欠かせなかったため、草原だけでなく湿地帯も生活圏に入っていたのでしょう。
「ブルーバック」の絶滅した原因
ブルーバックは、通説では1800年ごろにその絶滅したといわれています。
もともと個体数が多くなかったこと、ヨーロッパからやってきたハンターや現地在住の農民たちに美しい毛皮を目的に乱獲されたこと、スポーツハンティングと称した遊びのような狩りが行われたことなどが原因で、その数を急激に減らしていきました。
また、貴重な住処であった雑木林や草原は町や畑になってしまい、生活の場を奪われたことも大きかったでしょう。
ドイツ人動物学者のマルティンによると、最後のブルーバックは1800年にケープ州で殺されたそうです。
しかし、1853年にはお隣の州であるフリーステイト州で「青灰色のレイヨウ(アンテロープ)」が目撃されたとの記録があり、これがブルーバックの生き残りだったのではないかとも言われています。
しかしそれ以降の目撃情報はないため、どんなに遅くとも1850年代には完全に絶滅してしまっていたということでしょう。
「ブルーバック」の生き残りの可能性
上記でもお話した通り、ブルーバックが生き延びている可能性は限りなくゼロに近いと言えます。
しかし、海外では様々な角度から研究の対象となっている動物であり、論文も多数発表されていることから、まだなにか新しい発見が期待できるかもしれません。