絶滅危惧種 PR

【ライチョウとは】特徴や絶滅危惧の原因・生息地を紹介!

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「らいちょう」と聞けば何を思い浮かべるでしょうか?

平塚らいてうを思い浮かべる人もいれば、特急「サンダーバード」を思い浮かべる人、そして鳥のライチョウを思い浮かべる人もいるでしょう。

今回は国の特別天然記念物である貴重な鳥、ライチョウについてお話しさせていただきます。

「ライチョウ」とは

ライチョウはキジ目キジ科に属する鳥類です。北半球に分布している鳥で生息地はユーラシア大陸、北アメリカの北極海沿岸、ヨーロッパ、アジアの高山地帯に多く生息する鳥です。

日本にも生息する鳥であり、日本がライチョウの亜種の南限と言われています。

今回お話しするのは日本に生息する亜種である、標準和名ライチョウについてお話しします。

ライチョウは高山地帯に生息する鳥で、日本では標高2500m以上の高山地帯の岩場やハイマツといった低木のしげみを隠れ家として生活しています。

日本に生息する個体の起源は樺太、カムチャッカ半島にあり、2万年前に氷河期が終わったことで温暖になり、多くの個体はユーラシア大陸へ寒冷地を求めて戻ったものの、日本の高山地帯に一部が残ったものとされています。

ユーラシア大陸では新たな生息地を求めて飛来した個体によって交配が行われるなど、遺伝的多様性に富んでいますが、日本の場合、そもそも生息地的に隔離が起こっているため、世界の中で最も隔離され、遺伝的多様性にかけた亜種と言えるでしょう。

夏場は褐色、冬場は白色と季節に合わせて羽毛が変化する鳥で、これは生息域の岩場や雪原に合わせた保護色になるためです。

大きさは30~40センチほどの鳥でカラスより少し小さいくらいです。

基本的に食事はほとんど植物というベジタリアンで、花のつぼみや植物の新芽、果実などを食べます。

冬の間は雪の中から常緑の植物を探し出して食べているそうです。過酷な環境に順応した結果でしょう。こんな小さな体で高山地帯の厚い雪の中からどう餌を探し出しているのか気になるものです。

巣は地上に作る種で、ハイマツ、コケモモなどの枯れ葉や枝などを集めて巣を作ります。

産卵は5~7月と初夏に行われます。高山地帯では厚い雪が解けて、ようやく地肌が見え始め、新緑が芽生え始める時期でしょう。1匹あたり5~10個の卵を生みます。

メスは産卵を終えると3週間にわたって抱卵し、卵が孵化するとオスは縄張りを解いてメスが子育てのすべてを行います。今の日本社会では批判されそうな生態ですね。

しかし、オスもオスでなわばりを守ることで抱卵していて巣を離れることのできないメスを守っているのです。主な天敵としては猛禽類やオコジョやテンといったイタチの仲間、キツネなどの肉食動物があげられます。

標高の高い所でももちろん動物は多く、ライチョウにとっても決して安全な場所ではないんです。

また近年では温暖化によって雪が減少したこともあり、低地の生物が高山地帯にまでやってくることも多くなりました。カラスやサルなども敵に上がってくるとのことです。

また国の特別天然記念物と、ライチョウは非常に希少で守るべき生物として扱われています。

全国でも保護の活動は盛んに行われていますが、減少傾向にあることは間違いありません。

「ライチョウ」の分布・生息地

日本に生息するライチョウは本州中部の高山帯に生息します。飛騨山脈や、御嶽山、木曽山脈や南アルプス、立山連峰などの岐阜県、富山県、長野県などを主な生息地にしているようです。

北限は新潟県の火打山、焼山であり、南限は南アルプスのイザルガ岳です。

過去には岐阜県、石川県にかかる白山にも生息していましたが、大正初期を最後に確認が途絶え、この地の個体群は絶滅したとされています。

福島県でも1945年程までは目撃情報がありましたが、資料はなく、詳細は不明のままです。

「ライチョウ」が絶滅危惧種となった理由

2005年の調査では3000羽のライチョウが国内に生息していると言われていました。

現在ではその数は2000羽にまで減少し、環境省のレッドリストでも絶滅危惧種IB類と上から2番目の危険度での絶滅の可能性が示唆されています。

もともと数が多くない種ではありますが、3分の1がへってしまった要因として地球温暖化と人間活動があげられます。

地球温暖化により、日本国内の積雪量は減少傾向にあります。(ここ2~3年はドカ雪による一時的な大雪被害もありますが・・・)

積雪量が減少したことで、冬場でも餌を探して動き回るプレデターが増え、ライチョウも隠れる場所が少なくなるなどの被害がています。

前述のイタチや猛禽類は鳥を捕まえるプロですので、ライチョウは格好の餌食でしょう。

というのもライチョウは飛ぶのがあまりうまい鳥ではなく、地上では走り回るほうが早い鳥です。

これは高山地帯の岩場という場所が飛ぶよりも走る、跳ねるほうが生存に適していたためと考えられますが、その結果、地上の捕食者からも襲われる結果になりました。

雪が減ったことで、捕食者は低地から高山地帯にまでやってきやすくなりました。ニホンザル、カラスなども高山地帯にやってくるようになり、ライチョウのひなが襲われることが確認されるなど、ライチョウに直接的な被害が出ています。

捕食者だけではなく、イノシシ、鹿などの低地の生き物がやってくることで植生を破壊、ライチョウは餌までも低地の生き物に奪われ、数を減らしたとされています。

地球温暖化により、こうして高山地帯や寒冷地に生息する生き物は住処を奪われていくのですね。

次に人間活動です。

昔、明治時代にライチョウは乱獲され、一気に数を減らしたといわれています。

さらに近年、登山が人気になったということもあり、山小屋から排出されるゴミに混じった病原菌、人の足や体についたまま、高山に持ち込まれたウイルスなどの感染症もライチョウを襲う減少要因となっています。

主にサルモネラ菌、ニューカッスル症などの鶏などについている病原菌がライチョウに感染することで死亡する事例も散見されています。

ライチョウは好奇心旺盛で、人を見ても逃げないどころか近づいてくることもあるそうで、人との接触も少なからずあると考えられます。こういった希少生物の保護の観点からも野生動物にむやみに接することはよくないのです。

登山者が増えたことでポイ捨てなどの問題も深刻であり、生ごみを出すことで低地の生き物がやってきてついでにライチョウを食べてしまうといった痛ましい事故も起こっています。

高山地帯での観光としてスキー場などがあり、そういったものの開発や、高原での放牧なども生息地の破壊につながります。

人間の活動によってもライチョウは数を減らしているのです。

「ライチョウ」の保護の取り組み

ライチョウは大正時代に国の特別天然記念物に指定されてから多くの保護の取り組みが行われてきました。

ライチョウの個体群維持が難しい生息域において人工ふ化させた個体を再導入するという研究も進められています。

しかしひとの手によって育った個体は飛ぶことが難しく、捕食者に弱く、雨天時の悪天候にも弱いためまず母親とともに生活させることで飛翔できるようになったら放鳥するなどの工夫も取られています。

2019年時点ではいしかわ動物園、上野動物園、富山市ファミリーパークなどの全国5か所での飼育、研究が行われています。富山市ファミリーパークでは死亡したライチョウからの寄生虫や細菌感染などを研究しており、治療法を探すなど、傷ついたり、体調を崩したライチョウの保護をどうしていくかを模索しています。

また世界的にもライチョウを守る動きは盛んであり、「国際ライチョウシンポジウム」といったライチョウ属の鳥類に関した研究を公表する場が3年に一度設けられています。

長野県ではライチョウの生態調査を行ったり、登山者に対しての啓発運動が行われたりと一般的にもライチョウを知ってもらい、ライチョウの生息地を守る動きが盛んです。

ライチョウサポーターズといった制度を創設することで県民によるライチョウ保護活動の参加を通じてライチョウを知ってもらい、環境保全に取り組む体制もとられています。

絶滅危惧種においてはボランティア活動での環境保全活動を通じて生物について知ってもらい、参加者の環境保護意識を高めるというものは効果的で、乱獲をしようとする不審者の通報や不法投棄者への目が鋭くなるなど、地域住民との連携が生き物を守っていきます。

ライチョウは現在、減少傾向で、遺伝子の多様性も乏しい個体群であることから我々、一人ひとりが意識することでしか守ることのできない生き物であるかもしれません。

私たちがどう活動をするか、それにかかっている生き物も多く存在します。

もちろん、ライチョウを守るための活動がそのほかの生き物の生存にもメリットがあることであることもありますから、一人一人が環境を思う、そんな活動をしていくことが絶滅危惧種を守るうえで大事なのかもしれませんね。