鷹や鷲、いわゆる猛禽類と呼ばれる鳥類に魅力を感じる方は多いでしょう。
かっこいいし、強いし、何より大きい。その辺の小鳥とはわけの違う魅力を人は猛禽類に感じるものと考えております。
しかし、猛禽類は大型の捕食者ということもあって様々な要因で命を落としてしまうことがあります。例えばバードクラッシュ。これは風車などに当たってしまって無残な姿で死んでしまうことです。
小鳥とはちがう危険が彼らにはあり、数を減らしているのです。
今回はその中でもオオタカについて紹介をしていきましょう。
「オオタカ」とは
オオタカはタカの仲間で、鳥類の中でも中型の種類です。
(。´・ω・)ん?中型?オオタカじゃないの?
そう、オオタカは「大」とついているにも関わらずそんな大きくないです。大きさは40~50センチ。
カラスと同程度の鳥で、実は最も身近であろう猛禽類「トンビ」よりも小さいのです。
オオタカの名前の由来は「蒼鷹」であり、グレーの青みがかった羽が特徴的な鳥で、「蒼」が転じてオオタカと呼ばれるようになったといわれております。パッと見た感じはハヤブサにも似ています。
ハヤブサもグレーの青みがかった羽毛が特徴的な鳥です。それに黄色の眼球など酷似するポイントは多いのですが、見分け方としてはハヤブサの場合、胸の斑紋がないか、丸い斑紋になっているという点、オオタカの場合は胸にかけても横になった斑紋があります。
うん、これは一目じゃわからない!
それくらいよく似た鳥なのです。
平地から高地にまで幅広く現れる鳥で、猛禽類の中でも飛翔能力がかなり高いです。これはハヤブサにも通ずるものでしょう。
獲物は主にハトや鴨などの中型から小型の鳥類、ネズミやウサギなどの地上生の哺乳類などです。里山などにおいては食物連鎖の最上位に君臨する生物で、今までは生態系が健全でもなかった都市部にまで進出し、ドバトなどを獲物にしています。
よく、「ドードーポッポー」と鳴いているあのハトです。これがオオタカのごちそうになっているのです。
飛ぶ速さは水平飛行でも80キロ、急降下するときには130キロにまで達します。急降下する時には瞬膜という瞼のような膜で覆われた瞳が眼球を保護するために、容赦なく高速での急降下ができます。
一度狙った獲物は執拗に追いかける習性があり、ゆえに一日のうち、狩りにかける時間は長くなるものの、一日一度の狩りでも十分に食を満たすことができます。
1980年代まではめったに人里に現れる鳥ではなかったのですが、開発も相まってか、人への警戒心が薄れ、町中にまで進出してくるようになりました。現在では同サイズの鳥であるカラスまで捕食しているという情報もあります。関東でも海岸のマツ林などでも繁殖が確認されています。
東京でもその姿は見られ、明治神宮や上野公園などの都心に近い場所にも定着しています。
そこではドバトやムクドリなどの小鳥を獲物にしており、ときにカラスを襲ってカラスの巣を奪い、繁殖をしているという情報もあります。
こういった都市部への進出には保護活動の結果、オオタカの数が減少から増加に転じて、山間部での競争に負けた個体が都市部で生活を行っているという見解もあります。
都会での仕事にうまくいかなくて田舎の実家に帰る人間とは逆ですね。
日本には古来より鷹を用いた狩り、鷹狩が行われています。この鷹狩は従来はハヤブサやハイタカをヒナのころから育てることで人に懐かせて、いうことを聞くように調教して狩りをともに行うというものでした。
モンハンのアイルーみたいなものです。16世紀にはこのオオタカも用いられるようになりました。
オオタカは優れたハンターでハイタカ、ハヤブサ以上の狩猟能力を持つとされていますが、鷹狩に必要な技術は前者の2種類よりも高いものが求められるため、鷹狩を行う人間はオオタカを懐けるために厳しい訓練を行っていたそうです。ポケモンでいうところのドラゴンタイプみたいな感じですね。
現在はオオタカの捕獲が禁止されているため、海外のオオタカでこの鷹狩の伝統技術の継承が行われているそうです。伝統芸能の継承にオオタカが使われているあたり、昔から何百年もオオタカをトレーニングする技術が受け継がれてきたのだと感じます。
ちなみにメスのほうが大きいという鷹類共通の特長があり、オオタカのメスはオスよりも一回り大きいことからカラスなどの自分と変わらないくらいの生物を捕食するのはメスになるそうです。かかあ天下の大型メスは生物ではよくある話です。
「オオタカ」の分布・生息地
オオタカは北アフリカからユーラシア大陸、北アメリカ大陸と北半球ほぼ全域に棲息する鳥です。魚や爬虫類などと違って鳥は生息地が幅広いですね。
国内では南西諸島を除く、日本各地で見られる鳥です。分布域は広いですが西日本よりも東日本のほうが多い傾向があります。
渡り鳥ではなく、留鳥であり、一つの生息域を根城とする鳥ですが、冬季は寒冷地から南下して雪の少ない場所で過ごす個体もいるそうです。ただ、オオタカが渡り鳥ではないためか渡り自体がメジャーではないようです。
「オオタカ」が絶滅危惧種となった理由
主にオオタカが数を減らした原因は森林開発や、宅地造成にともなう生息地の破壊です。
高度経済成長期には多くの野山が切り開かれ、無秩序な開発が行われたために数多くの生物が住処を奪われました。これにともなって絶滅してしまった生物も数多くいます。
オオタカもその被害者の一種で、1980年までに急激に個体数が減ってしまいました。
その数は全国でも300~500羽と一時は絶滅寸前にまで追い込まれたこともあります。それだけ生息地を無秩序に破壊されてしまったということです。1984年には400羽という記録があります。
しかし、こういった高度経済成長の中で生物多様性の重要さが見直されたこともあって持続可能な開発や、生物に配慮した人間活動などが提唱されるようになったのです。
決してあの時代に命を落とした生物の犠牲は無駄にはなってはいません。
「オオタカ」の保護の取り組み
1993年に「種の保存法」が施行され、数多くの生物が「希少野生動植物種」に指定されたことからオオタカの保護活動などが行われるようになりました。
まずはオオタカの捕獲の禁止が言い渡され、オオタカの密猟は行われなくなりました。
加えて、野鳥保護活動が盛んに行われるようになり、営巣地の特定や、観察などの調査が行われました。
営巣地周辺では開発や、土地利用に関してこれらの調査の結果から提言が行われるようになり、オオタカにとっては住みやすい環境作りが行われるようにもなりました。
その結果、2000年代にはオオタカの営巣地で3~20ヘクタールの森林を残すといった成果が上がっています。こういった大きさの比較によく用いられる東京ドームが4.7ヘクタールですからこの活動がどれだけの森林を持ってきたのかを考えれば、賞賛せざるを得ない者に思えます。
現在では日本各地に5800羽のオオタカが棲息していると推測されます。
しかし、わずか10~20年ほどで10倍にまで増加してしまったオオタカは2006年には絶滅危惧種Ⅱ類、そして2012年には準絶滅危惧種へ、そして2017年には希少野生動植物種からの解除が行われました。希少野生動植物種からの解除という例はオオタカで2例目ということで異例のことであることが分かります。
しかし、10倍にも増えてしまったオオタカは種内でも競争が激しく行われるようになり、その結果、都市部にも適応した個体がそっちでも繁殖を行うことで数を増やすようになりました。オオタカの数の増加は保護活動によるものだけではなかったわけです。
現在ではその数は増加傾向になりますが、もとより里山の生態系においては最上位の生物ですからもちろん、そのえさの消費量も半端ではありません。
現在は敵もなく、のんびりと獲物を捕獲して暮らす彼らですが、実際のところ現状はブラックバス状態で数は増えているものの、えものは減少、新たな生態系の脅威ともなりかねない状態になっているそうです。
現在はオオタカにより生態系が破壊されたという例はありませんが、これからどう個体数をコントロールしていくのかという点も注目していかねばならないと考えています。
これは絶滅危惧種が増加に転じ、個体数が十分に回復したいい例でありながら、思っていたよりも増えすぎてしまったという数少ない例です。これをどう見るかは生物学者でも頭を悩ませる者ではあると思うのですが、こういった数少ない例とどう向き合っていくかも考えていかねばならないですね。