オガサワラガビチョウは、スズメ目ヒタキ上科ツグミ科の鳥類で、ツグミやヒヨドリに近い分類です。
全長は約10cm~20cmと、同じツグミの仲間の中でも小柄な体型をしています。
体色は、頭から背中にかけてオリーブの褐色で、黒い縞模様がみられます。
翼もオリーブの褐色で、翼の下面には白い帯がみられ、眼の先に暗褐色の紋があり、喉は白色、胸には褐色の斑がみられます。
鳥類の仲間では、雌雄で体色の異なる種も多いですが、オガサワラガビチョウは雌雄同色であると考えられています。
オガサワラガビチョウは、漢字で「畫眉鳥」と書き、眼の先にみられる暗褐色の紋が、眉のようにも見ることから、この字があてられているようです。
1828年に、ドイツ人鳥類学者である「キトリッツ」が捕獲して以来確認されておらず、現在は絶滅したと考えられており、環境省のレッドリストにおいても、絶滅と記されています。
現在、日本に標本はなく、ロシアのサンクトペテルブルクの博物館と、オランダのライデン、ドイツのフランクフルト、オーストリアのウィーンに所蔵されています。
「オガサワラガビチョウ」の生息地
オガサワラガビチョウは、日本固有種で、小笠原の父島のみに生息していたとされています。
名前に「オガサワラ」とあるのも、分布域からつけられているようです。
海岸近くの森林に生息し、樹上にはとまらずに、ほどんど地表近くで生活していたと考えられています。
また、大きな群れは作らずに、少数で生活していたようです。
胃の内容物から、主に昆虫や甲殻類を食べていたと考えられています。
「オガサワラガビチョウ」が絶滅した原因
オガサワラガビチョウは、1828年に採集されて以来、正確な情報がなく、すでに絶滅したと考えられています。
小笠原諸島では、約2000年前から人間が入植していたといわれています。
この当時の陸上生物相に関する情報はほとんどなく、この時代の入植者が島の生態系に
影響を与えたのかは定かではありません。
しかし、太平洋の島々では、移住者の影響でクイナ科を中心とした多数の鳥類が絶滅したことが知られており、小笠原諸島でも生態系に何らかの影響があった可能性はあるのではないかと考えられます。
また、1830年には西欧人とポリネシア人の本格的な移住が始まり、ネズミやブタなどの移入も多くあったようです。
オガサワラガビチョウの生息域から考えると、卵やヒナが、ネズミやブタなどに捕食されてしまった可能性は大いに考えられます。
こうした人間による環境の変化が、オガサワラガビチョウを絶滅させてしまった大きな要因ではないかと考えられます。
「オガサワラガビチョウ」の生き残りの可能性
1925年2月7日、母島石門山の林中で、鳥類学者である籾山徳太郎が、この種と思われるものを発見したと「生物地理学会会報」(第1巻3号)で発表しています。
しかし、情報が少なく、現時点では環境省のレッドリストにおいても「絶滅」と記されています。
東洋のガラパゴスとも呼ばれる小笠原諸島では、様々な生き物が独自の進化を遂げ、多くの固有種が生存しています。
オガサワラガビチョウも、独自の進化を遂げて、生活環境を変化させてひっそりと生き延びている可能性もないとはいいきれません。
褐色色で小柄でかわいらしいオガサワラガビチョウに、是非ともお目にかかってみたいものです。