絶滅危惧種 PR

【オサガメとは】特徴や生息地・絶滅危惧種になった原因を紹介!

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「オサガメはカメの仲間?」

「オサガメは日本で見られるの?」

オサガメは、「カメ」と聞いて思い浮かべるような硬い甲羅ではなく、ゴムのような柔らかい甲羅をもつウミガメの仲間です。

香川県や北海道では、白亜紀(1億4,550万年前~6,550万年前)に生息していたオサガメの仲間の化石が見つかっています。恐竜が絶滅した後も、ほとんど姿を変えずに生き延びてきたオサガメが、いま絶滅の危機にさらされているのです。

お読みいただくと、オサガメの魅力や保護のためにできることなどを知ることができますので、ぜひご覧ください。

「オサガメ」とは

オサガメは、爬虫類綱カメ目オサガメ科に属し、オサガメ科は1属1種で本種のみで構成されています。オサガメは、他のウミガメとは異なる特徴や、驚くべき身体能力をもつユニークな生きものです。

オサガメは、産卵のためにメスが上陸するほかは、一生を外洋域で暮らしているため、人目に触れることは多くありません。ここでは、オサガメの特徴やくらしについてご紹介します。

オサガメの特徴

オサガメの特徴は、その大きさと柔らかい甲羅です。

オサガメは、大人になると甲羅の長さが150cm以上、体重が300kg以上になります。これまでに発見された最大の記録は、体長256 cm・体重916㎏のオスで、1988年にウェールズ地方の西海岸に打ち上げられたものでした。

オサガメは、ウミガメの仲間としてだけでなく、現存の爬虫類の中でも最大といえるでしょう。

全身の体色は黒く、不定形の白い斑点が散在しています。

甲羅は一般的なカメ類がもつ硬いものではなく、滑らかで柔らかく、皮膚で覆われたゴムのような感触です。英名 Leatherback sea turtle(皮のような甲羅をもつウミガメ)は、甲羅の特徴に由来しています。

甲羅は細長く先端が突出し、7本のキール(筋状の隆起)があるのも特徴です。現生する他の6種のウミガメはすべて硬い甲羅をもつため、見分けるのは難しくありません。

オサガメのくらし

オサガメは、ウミガメの中で最も広範囲を回遊し、熱帯域にある営巣地と高緯度の餌場との間を移動しながら暮らしています。

巨体にも関わらず、オサガメの主食はクラゲ類やサルパ(ホヤに近い原索動物)といったゼラチン質の浮遊生物です。オサガメの口は、上くちばしが牙状で口の中に無数の突起があり、餌を捕らえるのに適しています。

オサガメ1頭が1日に食べる餌は、重量にしてオスライオン1頭分に匹敵する量です。オサガメがクラゲを食べることで、クラゲの生息数が一定に保たれ、海洋生態系が健全に保たれている一面もあります。

オサガメは熱帯地方で卵を産みますが、採餌場として適するのは、クラゲが豊富に生息する赤道から離れた海域です。

オサガメは他の爬虫類とは異なり、体内で発熱し体温を水温より上に保つことができるため、氷で覆われた高緯度海域でも生息することができます。

また、オサガメは遊泳能力が高く、最大2万㎞もの長距離の移動が可能です。オサガメが、繁殖地から餌場までの長い道のりをどのように把握するのかは不明ですが、同じ経路で移動することが分かっています。

さらに、深海に潜水することも知られており、最大で1時間以上、水深1,250mまで潜水した記録があるほどです。

メスは産卵時に上陸しますが、オスの多くが一生を海で終えます。ほぼ直線的に絶えず泳ぎ続けるオサガメは、水族館の水槽ではガラスにぶつかってしまうため、飼育することは困難です。

オサガメの繁殖

オサガメは、赤道近くの熱帯地域で繁殖します。

メスが営巣地に選ぶのは、植物に覆われた傾斜のある砂浜です。メスは営巣地近くの海岸に3〜4か月間とどまり、10 日間隔で6回ほど夜間に上陸して穴を掘り、5cmくらいの卵を繰り返し産みます。

卵を産む穴は深さ約 75 cm、卵の数は65〜115 個ですが、無精卵も含まれるため孵化するのは 85%程度です。

陸に明かりが多い場合や、障害物のない産卵適地が見つからない時には、メスは産卵せずに海に戻ってしまうこともあります。

産卵を終えたメスは、餌を求めて外洋に向かいますが、十分なエネルギーを蓄えて再び巣に戻るのは 2〜 5年後です。

子ガメは産卵から55〜 65日後に孵化し、約44g、甲羅は6cmほどの大きさです。孵化した子ガメは海に向かいますが、浜辺にいる海鳥・カニ・爬虫類・哺乳類などの天敵に狙われます。

孵化した子ガメのうち、最初の数日を生き延びるのは 25% 、1年後に生き残るのはわずか 6% です。成体になるまで生き残るのは約0.1%で、寿命は推定45年とされています。

「オサガメ」の分布・生息地

オサガメは、熱帯地域で産卵し、餌を求めて亜寒帯海域まで回遊するため、分布域は広大です。大西洋・太平洋・インド洋の熱帯から温帯の海域に分布し、更に高緯度の地域でも確認されています。

主な繁殖地は、メキシコ、コスタリカ、インドネシア・イリアンジャヤ、マレーシア、パプアニューギニア、ニコバル諸島、西インド諸島、フランス領ギアナ、トリニダード・トバゴ、ブラジルなどです。

マレーシアでは、1960年代に1万巣以上の産卵が見られ、巣の数から推計したメスの個体数は約4千頭でした。しかし産卵に訪れるメスは激減し、2004年に絶滅が宣言されています。

かつて主たる繁殖地であったメキシコやコスタリカでも、上陸するメスの数が大きく減少しており、太平洋とインド洋域のオサガメは実質的には絶滅に近い状態です。

大西洋域では、まだ比較的健全な状態にあるようですが、種全体として生息数が減っていることには変わりありません。

「オサガメ」が絶滅危惧種となった理由

オサガメが絶滅危惧種となった原因には、営巣地の開発、漁業の影響、営巣地の攪乱、地球温暖化の影響などがあげられます。

オサガメは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでVU(Vulnerable:危急)に掲載された、「絶滅の危機が増大している」種です。

世界のオサガメの個体数は、メスに限ると1982年には11万5千頭だったのが、96年には3万5千頭まで減少しました。特に東部太平洋では、近年97.4%も減少し50年以内に絶滅すると推定されています。

以下に、オサガメが減少してしまった原因について解説していきます。

営巣地の開発

開発による営巣環境の破壊は、世界中のウミガメにとって最も深刻な脅威です。

ウミガメが営巣する砂浜は人間にとっても魅力的な場所でもあり、レストランやホテルの建設などで開発されることが少なくありません。

建築工事で海岸の形状が変わると、オサガメが海から上陸できないほど急峻になることがあります。また、海岸植物の伐採や除去などの植生破壊は営巣海岸の浸食につながるため問題です。

さらに、建設工事の騒音や振動はカメを脅かす可能性があります。また、孵化したばかりの子ガメは、建物や道路からの光によって方向感覚を失い海から離れてしまうとのことです。

人の利用により生じるゴミやペットの排泄物による汚染も、カメに悪影響を及ぼすかもしれません。

誰にとってもレジャーは大切ですが、希少種の生息を圧迫してしまうのは悲しいことです。

漁業の影響

メカジキ、マグロ、サメ、エビなどの漁業において、網や釣り糸で意図せずウミガメを捕獲してしまうことも、ウミガメの生息数減少の原因です。

仕掛けられた網や釣り糸に絡まってしまうと、ウミガメは水面に浮上して呼吸することができず溺死してしまいます。また釣り針にかかったカメは、解放されたとしても死に至る怪我を負うかもしれません。

混獲による偶発的な捕獲を法的に規制するのは困難であり、網やつり糸などの脅威によって、多くのオサガメが寿命以前に死を迎えています。

営巣地の攪乱

密猟者、捕食者、海水浴客によって巣が荒らされると、卵や子ガメが危険にさらされてしまいます。

多くの国ではウミガメの卵の採取は法的に禁止されていますが、取り締まりが緩い地域では密猟が根絶されていません。

マレーシアなどでは、オサガメの卵スープは珍味として大変人気があり、1989年に卵の食用が禁止されても売買は続きました。食用禁止となったことで、逆に卵を密猟・乱獲するケースが多発したとのことです。

南米では、法的に許可されているウミガメの種の卵を隠れ蓑として利用し、オサガメの卵を採取・販売するケースが報告されています。

また、飼い犬や飼い猫などは、人間のパートナーであると同時に嗅覚の鋭い捕食動物でもあり、希少種にとっては脅威です。放し飼いの犬がカメの卵を掘り起こすのを、飼い主はすぐに止めることはできません。

意図しない観光客の行為や悪意ある密猟が、オサガメの繁殖を妨げています。

海洋汚染

プラスチックごみ問題も、オサガメに影響を及ぼす原因です。ウミガメが餌を探す海域では、今では動物プランクトンよりもマイクロプラスチックの方が多くなっています。

ウミガメはプラスチックの破片を飲み込むことが多く、それが消化管を塞いで餓死することもあります。近年、海へと流れ込んだポリ袋などをクラゲと間違えて食べ、体内から見つかるオサガメが増加傾向です。

漁師が海に落としたり捨てたりしたゴーストネットや釣り糸、漁具に絡まることもあります。油流出や農業・工業排水の化学物質汚染が、呼吸器の炎症、胃腸の潰瘍、臓器の損傷、生殖障害を引き起こす可能性も否定できません。

私たちの生活を便利にしてくれるプラスチックや化学物質が、海洋汚染の原因となっているのです。

地球温暖化

気候変動によるウミガメへの脅威の全容は未だ分かっていません。営巣地や餌場の気温上昇、海流の変化、海面上昇、海洋酸性化の進行は、ウミガメに悪影響を与える可能性があります。

巣の過熱によって性別比が歪んでしまい、孵化したばかりの子ガメがほとんどメスになることがあります。ウミガメ類は、巣の温度によってオスになるかメスになるかが決まるからです。

また、高温で巣立ち期の子ガメが死んだり、海面上昇により巣が浸水して卵の発育が妨げられたりすことも考えられます。

海洋全体でみると、海面温度・塩分濃度・酸素濃度・酸性度の変化により、ウミガメの餌の量と分布が変わると予想されています。孵化したばかりのウミガメや、若いウミガメがどの程度適応できるのか未知数です。

近年、地球温暖化に伴ってエルニーニョ現象が頻繁に発生しており、すでにオサガメへの影響が出ているかもしれません。

「オサガメ」の保護の取り組み

オサガメは、「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の付属書Iに掲載されています。よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

営巣地では次のような保護の取り組みが実施されています。

生息環境の保護

オサガメの保護のためには、営巣地域・回遊回廊・採餌地域の環境を改善し、人による悪影響を排除する必要があります。それには、科学的データに基づく保護区の設定や行為規制などが有効です。

ウミガメ保護では、卵を盗掘から守るために卵をまとめて孵化場に埋めなおす保全事業(移植)が行われることがあります。しかし、この方法で自然孵化よりも繁殖数が増えた例はないという意見もあり、科学的検証が必要です。

生息調査

生息数の増減を把握する基礎情報を得るためにも、生息調査は重要です。調査結果は、減少原因の解明や、悪影響をストップさせることにも利用できます。

調査項目は、営巣中のメスの測定、産卵数、巣の温度などのほか、カメが営巣するのを妨げる可能性のある人工照明の状況などです。営巣地で調査するスタッフの存在は、密猟者や捕食者を遠ざけるためにも効果的です。

さらに、カメを衛星追跡するためにタグを装着することがあります。広く海洋を利用するカメを人が目視で追跡するのには限界があるため、衛星タグのデータは非常に重要です。

衛星タグにより、カメの泳ぐ速度や深さ、潜水時間や頻度などの行動や位置情報を把握することができ、得られたデータは保護方策を検討するのに役立ちます。

環境教育

地域住民をはじめ、保護地域の管理員、地元のガイドなどに、オサガメの重要性や生態を理解してもらうため、環境教育を実施しています。

沿岸生態系におけるオサガメの役割と地元経済への価値について、コミュニティの認識を高めることが大切です。学校、近隣住民、観光客、企業への働きかけは、営巣地での保護活動への参加を促し、繁殖妨害を防ぐのに役立ちます。

行政機関への働きかけ

ウミガメ保護のために、保護区や規制を設定するためには、関係機関の協力が必要となります。よって、国際会議などで知見を公表したり、科学的データに基づいて行政機関に働きかけたりすることも重要です。

私達にできること

ここまで、オサガメの特徴・生態・分布域・生息地・保護活動について、解説してきました。

国内で野生のオサガメが見られることは非常に稀ですが、長崎ペンギン水族館では、1959年に長崎県五島市で捕獲された個体が剥製として展示されています。

また、佐賀県立宇宙科学館は、2022年9月に佐賀県唐津市の西の浜に漂着したオサガメの骨を展示する予定とのことです。

剥製や標本であっても実物のオサガメを間近に見ることは、貴重な体験となるでしょう。

なお、プラスチックによる海洋汚染や地球温暖化などの問題は、私達の生活と無関係とはいえません。はるか離れた遠くの海も、私たちのくらしと河川や大気でつながっているからです。

日々の生活の中で無理なくできる取り組みとして、次のようなことが考えられます。
プラスチックの使用を減らす
ゴミはきちんと分別して処理する
地球温暖化について関心をもつ

また、保護活動をしている団体に寄付をしたり保護活動に参加したりすることも手段の一つです。いくつか団体をご紹介します。

オサガメのことを知ることも、オサガメを守るための一歩です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。