皆さんは「始祖鳥」をご存知でしょうか。
有史以前の地球に存在し、鳥類と恐竜の関係を強く示唆していると言われる、幻の鳥です。
そんな始祖鳥とよく似た特徴を持った鳥が、19世紀ごろまで生き延びていたと聞けば、驚かれる方も多いでしょう。
その名もオークランドアイサ。古より変わらない姿を持ち続けた彼らの暮らしと、最期は一体どんなものだったのでしょう。
今回はそんな彼らについてまとめてみました。
「オークランドアイサ」とは
身体的特徴
オークランドアイサは変わった姿かたちの鳥でしたが、強いていうならカモに似ていたそうです。頭部は暗い灰色で、首から下は灰褐色でした。
天敵のいない島で暮らしていたため、進化の必要性のなかった彼らは、原始の姿をそのままに残していました。
細くギザギザとしたオレンジ色のクチバシは、現生鳥類の祖先と言われる始祖鳥のものとよく似ていました。
生態的特徴
本格的な研究が進められる前に絶滅してしまったため、詳しいことはあまりわかっていないようですが、潜水して魚を獲るのが得意で、海に住んでいたのではないかと言われています。
しかし翼は短く、飛ぶのはうまくなかったそうです。その上、泳ぐのも得意ではありませんでした。
また地上近くに住み、最大で5つの卵を産み育てたということもわかっています。
「オークランドアイサ」の分布・生息地
化石調査によって、ニュージーランド北島と南島、スチュアート島にも暮らしていたことがわかっていますが、主な生活拠点はニュージーランド本島から300㎞離れたオークランド諸島でした。
飛ぶのにも、泳ぐのにも適していなかった彼らが、どうしてそんな場所にたどり着いたのか、今も謎のままだと言います。
しかし南極に近く、冷たい風の吹き荒ぶ荒廃したこの島には、天敵となる哺乳類がいなかったため、平和に暮らせていたというのは事実のようです。
「オークランドアイサ」の絶滅した原因
もともとマオリ族の狩猟が原因で、19世紀ごろまでにはかなり数が少なくなっていたと言われています。
そしてその後オークランド諸島は、18世紀から19世紀にかけて、捕鯨船の寄港地としてにぎわいました。
人口は爆発的に増え、彼らの持ち込んだブタやクマネズミが残り少ないオークランドアイサを襲い始めるのに時間はかかりませんでした。
天敵らしい天敵を持たずに過ごしてきた彼らは、島の外からやってきた捕食者になすすべなく蹂躙され、数を減らしていきました。
数が減って希少価値が高まったことで、今度は自然研究家に目をつけられてしまいました。
コレクターと化した彼らは、島にやってくるたびにオークランドアイサを捕らえ、時に剥製にし、時に高値で売りさばいていったのです。
「オークランドアイサ」の生き残りの可能性
1902年1月、最後のオークランドアイサのつがいだと思われる2羽がコレクターによって撃ち殺されました。
そのつがいは剥製にされ、大英博物館に引き渡されたそうです。
そしてオークランドアイサは、世界にたった25体の剥製だけを残して、地球上から姿を消してしまったのです。
まとめ
原始の姿のまま生き、原始の姿のまま消えていったオークランドアイサ。
彼らの絶滅に人間の営みが大きくかかわっていることは言うまでもありませんが、進化をやめた者の末路はこのように厳しくあるということを、今を生きる我々に身をもって教えてくれているような気がしてなりません。