絶滅危惧種 PR

【カカポ】最弱の鳥の特徴や生息地・保護の取り組みを紹介

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「カカポは動物なの?」

「カカポは絶滅危惧種?」

「カカポって、響きがかわいい!」

カカポはニュージーランド固有の鳥で、オウムの中で唯一飛ぶことができない種です。ずんぐりとした体型で、人懐っこく独特の魅力をもっています。

1990年代に50羽ほどにまで数を減らしたこの鳥は、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにCR(Critically Endangered:深刻な危機)として掲載されている希少種です。

最後まで読んでいただくと、カカポの特徴・生態・生息地・保護の取り組みについて広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「カカポ」とは

カカポは、オウム目フクロウオウム科フクロウオウム属に分類される鳥類で、近縁種はいません。

ニュージーランド固有の鳥で、種名はマオリ語の「夜のオウム」に由来し、和名は「フクロウオウム」とされています。カカポは、オウムの中で最も重く、飛べない鳥です。

以下に、カカポの生態についてご紹介していきます。

カカポの特徴

カカポは大きくてずんぐりとした体型で、オスは体長60cm・体重3.5kgにも達し、繁殖期の前には体重がさらに60〜100%増加します。一方、メスはオスよりも小さく、色合いも地味です。

カカポの背面の羽はモスグリーンで黒いまだら模様があり、腹部や顔は黄色で、草木の中で身を隠しやすい色合いといえます。羽が非常に柔らかいのが特徴です。

象牙色の大きな嘴は、餌をすり潰すのに都合の良い構造をしており、頬ひげがあってフクロウのような顔つきをしています。頬ひげが地面につくくらい姿勢を低くして、地面の上のものを感知し、警戒時には体を直立させます。

また、体から強い芳香を発しているのもカカポの特徴です。その香りは独特で、バイオリンケース、花、蜂蜜などと形容されています。

人に対する警戒心がうすく、大きなぬいぐるみのような体つきで良い香りがするカカポは、一般的な野生生物のイメージとはかけ離れているかもしれません。

カカポのくらし

カカポは完全な草食性で、植物の葉・花・つぼみ・樹皮・根・根茎・球根・果実・種子などがエサとなりますが、季節によって変化します。

主として地上で暮らし、夜行性で、繁殖期にはペアを作りますが基本的には単独行動です。視覚よりも、発達した嗅覚によってエサを探し当てることができます。

カカポは広い行動範囲をもち、逞しい脚で一日に数km移動することが可能です。非常に木登りが得意で、強力なくちばしを使って大きな体を木の上に運びます。

翼が役に立つのは、バランスを取ったりブレーキをかけたり、木から飛び降りたりする時です。短い翼を羽ばたかせることで、怪我なく15mもの高さから地面に飛び降りることができます。

また、危険を感じた時には、じっと動かなくなることで、体色を活かし周囲の木々にまぎれて自分の身を守ろうとします。

最も長生きな鳥とされ、平均寿命は60年で最長記録は90年です。また、エネルギー消費量も、鳥の中で最も低いとされています。

ニュージーランドには、もともとカカポの天敵となる肉食の哺乳類が生息していなかったため、カカポはゆったりと暮らし独自に進化してきました。

カカポの繁殖

カカポは、繁殖方法も特徴的です。

オスは、レックとよばれる繁殖地を形成し、メスを引き寄せるために最大5キロ先まで聞こえる大きな「ブーブー」という鳴き声を発します。オスは求愛のために複雑なダンスやポーズをとり、繁殖相手を選ぶのはメスの方です。

カカポの巣は地面や朽ち木の窪みに作られ、メスは1度に1〜4個の卵を産みます。卵の向きを変えたり、生まれたヒナの世話をしたりするのはメスだけで、オスは一切関与しません。

繁殖期は、エサとなる樹種の果実が豊作の年に限られるため、2〜4年に一度の頻度となります。エサ植物の豊凶に依存した繁殖サイクルも、カカポが生息数を減らした一因といえるでしょう。

カカポの繁殖には、十分なエサ植物を確保できる豊かな自然が必要不可欠なのです。

「カカポ」の分布・生息地

出典:アソビノイズミ

カカポの生息地は2024年現在、コッドフィッシュ島のフェヌアホウ、アンカー島、リトルバリア島のハウトゥルの3か所です。いずれも捕食者のいない環境で、保護活動により管理されています。

すべての個体が無線送信機をつけて集中的に監視され、Department of Conservationによると2024年現在の生息数は247羽です。

カカポは、かつてニュージーランド全土に広く分布し、19世紀初頭までは一般に見られる種でした。カカポは現在では森林に覆われた島でのみ生息していますが、以前はさまざまな植生に生息していたとされています。

「カカポ」が絶滅危惧種となった理由

長い間、天敵がいない環境で存続していたカカポが減少した原因は、人による捕獲と人が持ち込んだ動物による捕食、生息環境の改変です。

9〜10世紀にニュージーランドに住み始めたマオリ人にとって、カカポは食料・装飾品・衣服として利用できる恰好の資源でした。カカポは危険を察知してもじっと動かなくなるだけなので、簡単に捕まってしまいます。当時のカカポの個体数は「木を揺らせば落ちてくる」と言われるほど多かったようです。

マオリ人と一緒に持ち込まれた飼い犬やネズミも、新たにカカポの天敵となりました。もともと生息地に存在しなかった哺乳類の捕食者に対し、カカポは身を守る術をもっていません。これらの捕食者は、主に地上で生活するカカポにとって大きな脅威となりました。

カカポは夜行性であり、オスのカカポが求愛行動で発する低い鳴き声によって、夜に狩りをする捕食者に見つかるリスクが高まります。

また、カカポがもつ特徴的な香りは、嗅覚で獲物を探す捕食者に対してはデメリットです。その上、危険を感じると動かなくなるカカポの習性は、視覚で狩りをする捕食者に対しては見つかりにくくなりますが、嗅覚で狩りをする捕食者を避けることができません。

大人のカカポはネコやオコジョに捕食されやすく、卵や雛の脅威となるのはネズミです。メスだけで卵を温めヒナを育てるため、メスがエサを探すために長期間巣を離れる間に、卵や雛が捕食されやすくなります。

ニュージーランドが欧州に発見され存在が認識されたのは1624年でしたが、すでにカカポの個体数は減少していたそうです。

1840年代以降、欧州からの移民の増加により、森林が開拓され農耕地・放牧地や生活の場へと改変されたためカカポの生息地が減少していきます。ネコやイタチなどの多くの捕食者も持ち込まれ、さらに、珍しさから人に捕獲されることもあり、カカポのおかれた状況は悪化の一途をたどりました。

カカポは2〜4年に一度しか繁殖の機会がないため、生息数が減少したところから回復させるのは時間がかかります。さらに、遺伝的多様性の減少は繁殖力の低下につながるため、カカポの生存にとって大きな問題です。

このように、カカポが絶滅危惧種となった原因は、直接的・間接的に人間の活動に起因しているといって良いでしょう。

「カカポ」の保護の取り組み

カカポは、1990年代に生息数が約50羽まで減少し、現在IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストではCR(Critically Endangered:深刻な危機)に分類されています。

残されたカカポの高齢化が進み、個体数の回復は困難であることが想像されましたが、現在、保護活動に関わる人々のたゆまぬ努力によりカカポは少しずつ増加しています。

人間により絶滅寸前まで追い込まれたカカポを保護しようとする試みは、19世紀終わりごろから始まっていました。以下にご紹介していきます。

カカポの保護の歴史

カカポの保護の取り組みは、1890年代にさかのぼります。

ニュージーランド政府は、南部に位置するリゾリューション島を自然保護区に指定し、自然主義者リチャード・ヘンリーに管理を託しました。

この地域には、捕食者がいなかったため、6年間で200羽以上のカカポが移送され保護が始まりましたが、オコジョが海を泳いで島に到達したため、失敗に終わってしまいます。

3匹のカカポが、1900年初めにリゾリューション島から別の島へ移されますが、野生化したネコが捕食者となり存続できませんでした。

1940年には、カカポに関する報告は一度なくなりましたが、1950年代にカカポが生息する兆候が発見され、1968年にはカカポの捕獲に成功します。しかし、保護のために捕獲して隔離しても、カカポは新しい環境に順応できず繁殖はうまくいきませんでした。

オスばかりの発見が続いた後、未調査だったスチュワート島において1977年にメスの個体がついに発見されました。1989年には、カカポ保護計画が実行され、繁殖に成功しています。

カカポの保護プログラム

ニュージーランド政府はカカポ保護のために多額の予算を投じ、保護活動を強化しています。同政府は、2050年までに本土から外来種を一掃し、オウムや他の多くの種が元の生息地に戻れるような野心的なプログラムを開始しました。

カカポの保護活動に関する具体的な内容は、次のとおりです。

生息地での保護捕食者のいない環境において、全個体群を管理
無線テレメトリの使用全てのカカポにスマート送信機を装着し行動を追跡、データを収集
繁殖期の巣の監視繁殖中の巣は機器により監視され、弱った雛が確認された場合は人工飼育のために救出
健康診断年に一度、重量測定・脱皮状態の確認・血液サンプルの採取・寄生虫のチェックなどを実施
捕食者の制御オコジョなどが侵入する可能性のある島において、わなの設置と監視
エサの提供繁殖期に特別に配合された餌を提供し、繁殖・育雛のために十分な健康状態を管理
人工孵化と人工飼育ヒナの数が多すぎたり、ヒナが病気であったりする場合に実施。人工授精により遺伝的多様性の維持を目指す

以上のように、生涯にわたるモニタリングや環境管理など、これまでの知見をいかした保護活動によって、カカポの個体数は着実に増加しています。

私たちにできること

カカポはニュージーランドの野生生物ですが、移入種の問題は世界共通の課題です。グローバルな経済活動が拡大したのに伴い、人や物の移動によって意図せず生きものが運ばれてしまう可能性が高まっています。

移入種によって在来の生態系や固有種が深刻な影響を受ける問題は、日本国内でも同様です。勢力を拡大した移入種をどう扱うのか、減少してしまった野生生物を回復させるために、どこまで労力と予算を割くのかについては、議論のあるところでしょう。

ニュージーランド政府がカカポの保護に多額の予算を投じているのは稀なケースかもしれません。離島など限定的な範囲であったとしても、ニュージーランド固有の生態系を取り戻しカカポの生息数を回復できれば世界の先駆例となるでしょう。

日本国内でカカポを見ることはできませんが、生息地でカカポの保護活動をしている団体に寄付をしたり、保護活動に参加したりすることは可能です。

カカポに関心をもち情報を得ることも、カカポを守るための一歩といえます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。