カンムリツクシガモの美しい姿は、江戸時代に作成された写生図やカルタにも残されるほどでした。
しかし、彼らはひっそりと、確実に数を減らし、人知れず絶滅してしまったのです。
今回はそんな幻の鳥・カンムリツクシガモについてまとめてみました。
「カンムリツクシガモ」とは
身体的特徴
体長は約64㎝で、典型的なカモ類と同じような体つきをしています。
そのため、発見当初は他の種との雑種だと考えられていたほど。
また、オス・メスで体色が異なり、オスは頭頂部から首の後ろにかけて黒色の冠羽があり、顔と首は黄灰色、胸の上部は黒、羽の根元は灰色でそれ以外は赤褐色でした。
メスは顔が白色で頭頂部が黒、目の周りは輪のように白色の羽毛でおおわれていました。
生態的特徴
その生態に関してははっきりと記録が残っているわけではありませんが、ロシア、ウスリー、中国東北部などの寒い地域で繁殖し、中国東北部や朝鮮半島、日本にやってきて越冬していたのではないかと考えられています。
また、つがいや少数の群れで行動していたという報告例もあるようです。
「カンムリツクシガモ」の分布・生息地
ロシア、ウスリー、中国東北部、朝鮮半島、日本で生息が確認されています。
「カンムリツクシガモ」の絶滅した原因
カンムリツクシガモのはっきりとした絶滅の原因については、明確なソースを伴った情報に出会うことはできませんでした。
しかし、多くの鳥類がそうであるに、狩猟によって数を減らしていったというのが有力なようです。
「カンムリツクシガモ」の生き残りの可能性
1917年に朝鮮半島の釜山付近でメスの個体が採集されて以降、正確な発見例はありません。
1964年にウラジオストク、1971年に朝鮮半島で、1976年~1988年に中国でそれぞれ目撃情報があるようですが、どれもかなり不確実なもののようです。
このことから、カンムリツクシガモはすでに絶滅してしまっていると考えてよさそうです。
「カンムリツクシガモ」の剥製について
カンムリツクシガモの剥製は、地球上に3体しかありません。
しかしそのうちの2体は、なんと日本の研究室で保存されているそうです。
残りの一体はデンマークの博物館に保存されています。
まとめ
江戸時代には徳川の将軍家に献上されるほど、美しく優雅な姿をしていたカンムリツクシガモ。
しかし、動物の保護に対しての意識が低かったその時代では、窮地に立たされていた彼らを救おうとするものは誰もいませんでした。
もはや私たちに許されるのは、たった3体の剥製と写生図から、彼らの羽の美しさやその生活に思いを馳せることだけなのです。