首から上はシマウマ、首から下は普通の馬。これ、なーんだ?
え?なぞなぞ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこれ、「クアッガ」という動物なんです。
「パジャマのズボンを履き忘れたシマウマ」など、そのユニークな見た目で親しまれていたクアッガ。
今回はその生態に迫ってみましょう!
「クアッガ」とは ・身体的特徴
クアッガは体高は135㎝程、体長260㎝程のウマ科の動物です。シマウマより一回り小さいくらいのサイズですね。
そしてやはり特徴的なのがその模様。シマウマのような縞模様は肩より上までで、背中~お尻にかけては赤茶色、足はクリーム色と、まさに「パジャマのズボンを履き忘れたシマウマ」のような見た目です。
しかし、どんな理由で首から下に縞模様がないのかということについては、現在に至るまで解明されていません。
ちなみに、「クアッガ」という名前は、彼らの「クーアッハ、クーアッハ」という独特の鳴き声に起因するものだそう。
生態的特徴
シマウマたちと同じように数十頭単位の群れを作って暮らしていたようです。19世紀ごろまではなんと15000頭ほどの大所帯のグループもよく見られたのだとか。
また、同じ地域にバーチェルサバンナシマウマも生息していたようですが、交じり合うことなく別々の群れを作って暮らしていました。
「クアッガ」の分布・生息地
クアッガがかつて暮らしていたのは南アフリカの最南の地域でした。
ちなみに、クアッガを含むシマウマの亜種たちは、南アフリカの中で南に行けば行くほど縞模様が目立たなくなり、シマウマらしい模様ではなくなっていくという分布上の特徴があります。
「クアッガ」の絶滅した原因
クアッガが絶滅した要因は2つあります。
生息地が奪われたこと
17世紀以降、南アフリカ地域に入植してきたボーア人(オランダ系ヨーロッパ人)は、家畜である牛の食料を確保するため、クアッガを牧草地から追い出そうと試みました。
草食動物であるクアッガと牛は、食料にする牧草が一致していたため、クアッガは牧草を食べる邪魔者とみなされてしまったのです。
遊び半分での乱獲
肉や皮などを目的に狩られることももちろんありましたが、ほとんどはスポーツ・ハンティングの感覚で狩られ、その肉は植民者の使用人であった先住民のコイコイ人の食料になりました。
クアッガの肉は牛と羊の中間のような味がしたそうです。
結果的に、野生のクアッガは1850年以降にはオレンジ川以南の地域以外では見られなくなり、1877年の広域に及ぶ干ばつによって、ほとんど絶滅してしまいました。
最後の野生個体も、1879年に射殺されてしまったそうです。
動物園での飼育個体も少なかったため、絶滅の危機を救うほどの働きは期待できませんでした。
そして1883年にアムステルダムのアルティス動物園で飼育されていた雌の一頭が死んだことで、クアッガはとうとう絶滅してしまいます。
驚くべきことに、その動物園の飼育員までもが、その一頭が地球最後のクアッガだとは夢にも思っていませんでした。
人間の乱獲や土地開発による野生動物の絶滅が問題視され、動物保護の機運が高まるのは、まだ先の時代の話だったのです。
「クアッガ」の生き残りの可能性
1883年8月12日に最後のクアッガが死んだと明確に記録
されているため、生き残りに出会える可能性はほぼ無いと言って良いでしょう。
しかし、クアッガの剥製から採取したDNAにより、クアッガは最も広い地域でその姿が確認できる「サバンナシマウマ」の亜種であることがわかりました。
これを受けて、クアッガの故郷である南アフリカでは、「クアッガプロジェクト」なるものが発足。交配によってクアッガを復活させようという試みです。
そして長い年月をかけ、首から下の縞模様が薄いシマウマを作り出すことに成功しました。
クアッガが独立した一種の動物ではなく、サバンナシマウマの一種だと判明したことで、掛け合わせによる再生が期待できそうだと判断したのですね。
まとめ
ユニークで不思議な動物、クアッガ。悲しい末路を辿った彼らですが、今もその生きた姿を一目見ようと懸命になっている人たちがいることもわかりました。
しかし、人間によって恣意的に生み出された命を、クアッガと呼んでもいいものなのでしょうか。
それはクアッガに似た全く別の生き物なのではないでしょうか。
いくら亜種だとは言え、絶滅した動物を蘇らせようという思惑自体、人間の領分を逸脱したものではないのでしょうか。
真に向き合うべきはその復活ではなく、今ある命の保存なのではないでしょうか。
皆さまはどう思われますか?