世界の絶滅した動物達 PR

【シャンハイハナスッポンとは】生息地や絶滅の原因・生き残りの可能性

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「シャンハイハナスッポン」とは、カメ目スッポン科ハナスッポン属に分類する大型のカメの仲間です。

川や湖沼等の淡水域に生息するカメの中では最大種と言われています。

その大きさは、治療目的のために2011年に捕獲された個体で体長200cm、体重は200kg前後もあり、その年齢は100歳以上というまさに「仙人」のような個体でした。

メスはオスと比べてやや小柄ではありますが、それでも甲羅の大きさだけで80cmもあり全長であれば120cmは越えていたと思われます。

スッポンと言う事もあり、背甲はとても扁平でやや細長い小判のような形をしています。

腹側以外の部分は濃いオリーブ色をしており、黄色や淡黄色〜灰白色の小さな斑模様や虫食い模様が入ります。

腹側にある腹甲は灰白色で背甲と比べると少し大きめですが、後甲板はあまり発達しておらず小さいです。

この後甲板は少し暗い色をしていますが、首や前肢、後肢、尾の腹側は灰白色をしています。

とても大きなカメですが、ワニガメやカミツキガメと比べて頭部の大きさは中型です。

上部を警戒するためか、目は頭の上側によっており、鼻はブタの鼻に似ています。

オスの尾はメスよりも長めで太く、「総排泄孔」という器官が尾の先端寄りに確認できます。

食性は雑食性と思われ、シャンハイハナスッポンの胃の中からイネ科の植物の葉やホテイアオイ、魚、カニ、カタツムリ等の巻き貝、カエル等が見つかったという記録があります。

繁殖期は春〜初夏であり、飼育下では5月頃に交尾する様子が確認されており、6月頃に40〜100個程産卵したそうです。

また、野生個体が観察されていた頃は、メスは産卵が近付くと巣を作り、その中に60個前後の卵を産んでいたという話もあります。

卵のサイズもかなり大きく、直径は2cm以上あったと言われています。

「シャンハイハナスッポン」の分布・生息地

中国の上海市、江蘇省南部や浙江省の長江、太湖、雲南省南東部の他、ベトナムのホアン・キエム湖、紅江に生息していました。

しかし、シャンハイハナスッポンの化石が見つかった場所も見てみると、中国やベトナムだけでなく台湾にも生息していた可能性があるとも考えられています。

本格的な調査が入る前に絶滅したとされているため、詳しい生息環境は明かされませんでしたが、大きな河川に繋がっている沼地や湿地帯の泥の中に身を潜めていたとされています。

「シャンハイハナスッポン」の絶滅した原因

この巨大ガメは、食用や漢方等の薬用として乱獲された他、生活排水や有害物質の垂れ流し、ダムの建設や河川の補修工事によって絶滅に追い込まれてしまったと考えられています。

本種に限らずスッポンの仲間はキレイな水が流れ、砂泥、砂礫のある場所を好んでいます。他のカメよりも扁平で柔らかい甲羅はそんな川底に潜るための進化の表れなのです。

そんなスッポンの仲間であるシャンハイハナスッポンが生息地の水質を悪化され、隠れ家や餌場を奪われてしまえば数が激減するのは火を見るより明らかだったでしょう。

結果として、1970年代にはベトナムのホアン・キエム湖に生息している個体以外が絶滅したとされています。

1972年には中国では野生個体が採取される事がなくなってしまい、絶滅したと言われています。

しかし、1980年代以降も生き残っていたシャンハイハナスッポンの乱獲は収まらず、食用や薬用、ペット用として取引されていました。

肉は食用、甲羅は薬用、頭部の骨は記念品として扱われたそうです。

乱獲が続いている間も生息地の環境破壊は続き、巨大で見つけやすかったはずのシャンハイハナスッポンは急速に姿を消していきました。

1993年にはようやく保護の提案が出されましたが、その頃にはシャンハイハナスッポンは絶滅寸前の状態でした。

動物園で飼育したものの、2005年に北京動物園、2006年に上海動物園で飼育されていた個体が相次いで死亡し、2007年には蘇州動物園のオス個体以外が死亡しました。

ところが、2008年に長沙動物園で別種とされていた個体がシャンハイハナスッポンのメスであった事が判明し、一縷の望みをかけて繁殖目的で蘇州動物園に移される事になりました。

メスは産卵してくれたものの無精卵が多く、繁殖は失敗でした。その大きな要因はオスの生殖器の7割が失われた状態であった事、餌や飼育環境が適切ではなかった事等が挙げられています。

オスに電気ショックを当てて採取した精液を用いた人工授精も空しく、最後のメスとされる個体は2019年に死亡してしまい、残る個体が全てオスであるため絶滅は免れない状態となってしまいました。

「シャンハイハナスッポン」の生き残りの可能性

「絶滅は免れない状態」となってしまったシャンハイハナスッポンですが、それは「飼育下」だけの話になりそうです。

何故なら、まだ野生で生き残っているという素晴らしいニュースがあるからです。

2020年、ベトナム・ハノイ市のソンタイ町にある湖「ドンモー湖」で見つかった大型のスッポンを詳しく調べたところ、なんと野生下で絶滅したと考えられていたシャンハイハナスッポンである事が分かったのです。

また、スアンカイン湖でもよく似た巨大ガメが目撃されているため、自然保護団体は近く調査に乗り出すそうです。

また、日本でもシャンハイハナスッポンが見つかった事があります。

それは奈良県の「猿沢池」という所であり、食用に輸入されたスッポンの中に混じって来たらしく、池に放たれた後もそのまま住み着いていたようです。

絶滅の運命しか見えなかったシャンハイハナスッポンですが、まさかの野生個体が生き残っていた事は喜びを禁じ得ません。

「ペット用」に輸入されていた個体もいたようなので、日本中、世界中を探しせば逃げ出した個体がどこかの河川に身を潜めている個体もいる可能性があります。

しかし、生き残りがいるからといってそれだけで終わってはいけない問題でもあります。

今後、彼らが未来へ命を繋いでいくためにも、生息環境の見直しや保護、密猟者対策等も必要になってきます。

日本には「鶴は千年、亀は万年」という言葉がある程長寿の生き物です。ここで途切れる事なく、幾万年先も命のバトンが続いてくれる事を祈りたいです。