「スムースハンドフィッシュ」とは
小型のアンコウの仲間の1種です。スムースハンドフィッシュの標本は世界に1つしか残っていないため、生きていた頃に発色していた本来の体色等は知る由もありません。
しかし、他のハンドフィッシュの仲間には白地に黒褐色の細かな水玉模様であったり、全身目が覚めるような赤色だったりと派手な体色も多いため、スムースハンドフィッシュの体色も美しい物だったと思われます。
ハンドフィッシュの仲間は多くの魚類が体内に持っている「浮き袋」を持たないため浮力を調整できず、魚でありながら「泳ぐのが苦手」という特徴があります。
しかし、ハンドフィッシュの名前の通り胸ビレが「手」のように発達しており、この肉厚な胸ビレを使って岩肌や海綿、海藻等を掴んで移動したり、体を固定していたそうです。
また、その見た目はカエルアンコウの仲間に似ていますが、比較すると体が少々長い特徴があります。カエルアンコウとツマジロハオコゼを足して2で割ったような体型といった不思議な見た目です。
頭には「エスカ」という餌となる小魚や甲殻類等を誘き寄せる擬似餌のような器官があり、これを巧みに使って捕食していたと考えられています。
「スムースハンドフィッシュ」の分布・生息地
オーストラリアの南東部の海に生息しており、岩や海綿の多い環境だったため、それらを掴みながらゆっくりと移動し擬態をしていたとされています。
「スムースハンドフィッシュ」の絶滅した原因
スムースハンドフィッシュの絶滅原因はいくつか考えられており、生息海域の水質、環境の悪化や乱獲が原因と言われています。
その中でも「乱獲」ですが、スムースハンドフィッシュはかつて個体数が多く、ポピュラーな魚だったそうです。
しかし、彼らを狙って網を入れるといった事はなく、この海域に生息する食用の魚や貝類、甲殻類を獲るための漁の網に「紛れ込む」形で漁獲されたと言われています。
スムースハンドフィッシュは泳ぎが大の苦手な魚であり、移動も歩くように行われる事から速度も遅く、しかも海底付近にいる事が多かったため網から逃げる事ができなかったため、そのまま他の魚達と共に捕まってしまったのです。
海域の汚染も大きな問題となっており、スムースハンドフィッシュを含むハンドフィッシュの仲間は水質が悪化すると肌が爛れて死んでしまう程繊細な魚であるため、土地の開拓や水質の汚染により次々と姿を消してしまいました。
そうして姿を確認できなくなった2020年3月、スムースハンドフィッシュには絶滅宣言が出される事となってしまったのです。
標本が1つしか残らなかったのも、生息数や漁の巻き添えによる乱獲の被害をそこまで深く考えてもらえなかった事を表しているかのようで、この現代にて最初に絶滅認定され、静かに姿を消していった海水魚と言えます。
「スムースハンドフィッシュ」の生き残りの可能性
このように静かに消えていったスムースハンドフィッシュですが、ハンドフィッシュ自体が擬態が得意な種類であるため、単に見つけられていないという可能性もあります。
しかし、スムースハンドフィッシュ以外のハンドフィッシュの仲間も絶滅危惧種にまで追い詰められている種類が多数存在するため、乱獲や生息環境の改善をしなければ見つける前に人知れず滅んでしまう可能性があります。