ドウソンシンリントナカイは、偶蹄目、シカ科に属するトナカイの仲間です。
トナカイの亜種であるという報告がありますが、この亜種についての分析についてはあまり知られていません。
現在残っている頭蓋骨や角などを用い、遺伝子解析が行われていますが、ドウソンシンリントナカイが遺伝的に異なっていたわけではないことが示唆されています。
体長1.4m、体重は100~130kgで、普通のトナカイの半分以下というとても小柄な体系をしています。
1878年に初めて発見され、1880年にイギリスの動物学者である「ドウソン」が新種であるという論文を発表しています。
この動物学者の名前をとり、「ドウソンシンリントナカイ」と名付けられたようです。
「ドウソンシンリントナカイ」の分布・生息地
ドウソンシンリントナカイは、カナダ西海岸沖80kmに位置する、ブリティッシュコロンビア州のクイーンシャーロット諸島に生息していました。
しかし、元々個体数はあまり多くなく、島に住む先住民さえも知らず、人目のつかない森林地帯にひっそりと暮らしていたといわれています。
人目に触れる機会が少なかったからか、基本的な生態についてもわかっていないことが多いようです。
「ドウソンシンリントナカイ」の絶滅した理由
ドウソンシンリントナカイが絶滅した原因について、正確なことはわかっていません。
元々、ドウソンシンリントナカイの生息地であるクイーンシャーロット諸島の先住民たちは、海の近くに住んでおり、食料は主に海から得ていました。
このことから、森林地帯まで狩りに出かけることはほとんどなかったようです。
しかし、ヨーロッパからやってきたハンターたちは、トナカイの毛皮や角を利用するために、森林地帯の奥まで入りこみ、狩りを行うようになりました。
1878年に最初に小型のトナカイ(のちにドウソンシンリントナカイと新種記載される)が捕獲され、新種記載されるかどうか協議がなされている最中にも、引き続き狩りは行われました。
この際、トナカイと同時にドウソンシンリントナカイも捕獲されていた可能性が考えられます。
1908年、オス2頭、メス1頭、子ども1頭の群れが発見され、子ども以外の3頭が射殺されました。
生き残った子どもも、のちに親がいないため死亡し、これを最後に絶滅したといわれています。
これらのことからも、ドウソンシンリントナカイが絶滅した原因は、人間による乱獲の影響が大きいと考えられます。
「ドウソンシンリントナカイ」の生き残りの可能性
ドウソンシンリントナカイは、トナカイの亜種であるといわれていますが、そのほかの亜種と比較して、遺伝子的にはとても近いという記録が残っています。
このことから、今後同種として扱われる可能性も否定できません。
そうなると、絶滅していないということになることも考えられます。
また、元々確認されている個体数が少なく、人間の目に触れる機会が少なかったことを考えると、現在においても森林地帯でひっそりと暮らしている可能性もあるのではないかと考えられます。