ナイジェリアコビトカバ。
いつ聞いてもおかしな名前です。小人なのか、カバなのか。
カバ界の小人ってことなのか。
なんとなく可笑しくて、かわいい名前のこのカバは、かつてナイジェリアの湿地帯で静かに暮らしていました。
今回はその生態に迫っていきたいと思います。
「ナイジェリアコビトカバ」とは
身体的特徴
ナイジェリアコビトカバは体長170㎝~180㎝、体重180~270㎏と、大きさや重さは現存するコビトカバのそれと大差ありません。
普通のカバの成体が330㎝~520㎝程度であることを考えると、コビトカバという種自体がかなり小型であることがわかります。
生まれたての赤ちゃんに至っては6㎏しかないそうです。
足は体の大きさの割に長く、横幅もあります。また普通のカバと比べて、指と指の間の膜はほとんどありません。
水中に長時間潜るため、耳や鼻の穴を閉じられるように強力な筋肉を持っています。
生態的特徴
食事としては、単独かつがいで、一頭の子供を連れて生活していたようです。
森の木の葉っぱや根っこ、木の実などを食べて、病気を媒介するハエから身を守るため水遊びをして過ごしていました。
ある自然観察家の記録によると、深い水に潜り、転がったり水浴びをしたりして、ゆうに一時間を過ごすこともあったようです。
「ナイジェリアコビトカバ」の分布・生息地
ナイジェリアコビトカバは、ニジェールデルタ・クロス川の東に生息し、川のほとりの熱帯雨林地帯を好んでいました。
水浴びのため、深い川の近くに暮らしていたんですね。
「ナイジェリアコビトカバ」の絶滅した原因
ナイジェリアコビトカバは、主に肉を食べる目的で、先住民によって狩猟の対象となっていました。
カバを食べる……というと日本で暮らす私たちにはイメージがわきにくいかもしれませんが、実は牛や豚のような味で、かなり美味しいそうです。
香草を餌にしているため、風味がいいんだとか。
また、水質汚染も絶滅の原因の一つに数えられます。石油の探査や発掘が進み、漏れた石油によって水質はどんどん悪くなっていきました。
水を離れては生きられない彼らは、住処を追われひっそりと絶滅していきました。
「ナイジェリアコビトカバ」の生き残りの可能性
1945年、ニジェールデルタの近くで一頭のコビトカバの心臓を打ち抜いたと、動物のコレクターであるヘスロップの記録にあります。
実はこれが、ナイジェリアコビトカバのほとんど最後の生き残りだったのです。
1989年、ナイジェリアコビトカバを発見するための大規模な調査が行われましたが、一頭も発見できませんでした。
1945年のヘスロップの記録が最後の目撃情報なので、この調査よりもっと前に絶滅していたのでしょう。
現在リベリアなどでは、コビトカバを守るための法律が整備されました。
しかし、それも彼らを守るには遅すぎたようです。現在に至るまで、ナイジェリアコビトカバを見たという報告はありません。
まとめ
カバ界の小人こと、ナイジェリアコビトカバ。
ただ静かに暮らしていただけの彼らも、また人間の身勝手さの被害者でした。
今現在その存在についてはあまり熱心に調査がされていないようですから、もしかすると、まだ深い森の深い水の中で、ひっそりと息をひそめているかもしれません。