自然と共に生きてきたニュージーランドのマオリ族は、かつては海や川などの自然とともに生活していました。
そんな川の恵みの一つが、このニュージーランドミナミアユです。
1860年までは、ニュージーランド各地で見ることのできたこの魚は、そこからわずか10年程度で急激に姿を消してしまいます。
彼らの身にいったい何があったのでしょうか。
今回はそんな彼らの生態と、絶滅の原因を追っていきます。
「ニュージーランドミナミアユ」とは
身体的特徴
最大でも22㎝と、私たちが普段口にしている川魚の鮎よりは少し小さめです。
形状としては鮎やマスとよく似ていますが、イラストを見ると背中は灰褐色で、白い斑点模様があったようです。
生態的特徴
海と川を往復する両側回遊性の魚で、晩夏には繁殖のために川を遡上し、秋から冬にかけては川で生活、春に降海する、という生活サイクルを持っていました。
また、孵化した稚魚は川を下り、大人になるまでは海で過ごしていたようです。
「ニュージーランドミナミアユ」の分布・生息地
その名の通り、ニュージーランドで広くその生息が確認されています。
「ニュージーランドミナミアユ」の絶滅した原因
彼らの絶滅にはいくつかの複合的な原因があります。
サケ・マスなどが持ち込まれたこと
19世紀にはヨーロッパからの移民たちは、釣りを楽しむためにニュージーランドミナミアユよりも釣りがいのあるマスやサケなどを放流しました。
彼らは移民の乱獲の対象になっただけでなく、他の魚類の獲物となったことで、徐々に数を減らしていきました。
川の近くの森林が伐採されたこと
一見魚類の彼らには関係のない事象のように思われますが、実は川岸の木は彼らに日陰と隠れ家を提供していたのです。
日影ができなくなったことで川の水温は上昇しました。その温度変化に適応できなかった彼らは、少しずつ姿を消していきました。
「ニュージーランドミナミアユ」の生き残りの可能性
1860年代にはニュージーランド各地に豊富に生息していた彼らですが、それからわずか10年後の1870年代にはすでに減少が確認され、いくつかの地域においては消滅したという報告もあったようです。
その後も減少は止まらず、1920年代に大英博物館に送られた個体を最後に絶滅してしまったということです。
その後は野生・飼育下ともに生きている姿は報告されていないため、完全に絶滅してしまったと言っていいでしょう。
まとめ
彼らの絶滅は人間による乱獲だけでなく、森林伐採によるものでもある、というのが私にとっては少し意外でした。
水に生きる彼らも、森の力を借りて生きていたのでしょう。
ニュージーランドミナミアユの絶滅は、私たち人間に、自然とは一つ一つ切り離されて完結しているのではなく、つながりの中で存在するものであるということを教えてくれているのです。