「ババリアマツネズミ」とは
ババリアマツネズミは、ネズミ目ネズミ科に属する、齧歯類です。
体長は9~10.5cm程度で、茶色の体をしています。
現在、ババリアマツネズミの標本は23施設の博物館に保管されています。
1962年を最後に発見されておらず、絶滅したと考えられていました。
しかし、2000年に明らかにババリアマツネズミであろうという種の個体群が発見されました。
この個体群の遺伝子は、東アルプスのリヒテンシュタインに生息するハタネズミと非常に近いことがわかりました。
現在、ババリアマツネズミは「絶滅」ではなく、「絶滅危惧(CR)」と記されています。
「ババリアマツネズミ」の分布・生息地
ババリアマツネズミは、ドイツ連邦共和国のバイエルン州に属する都市である、「ガルミッシュパルテンキルヒェン」というところにしか生息していないと考えられていました。
主に標高600~1000mの、湿った牧草地を好んで生息していたようです。
しかし、2000年に再発見された場所は、そこではなく、ヨーロッパ中部にあるオーストリアとイタリアにまたがるアルプス山脈北部の地域にある、「チロル」という地域でした。
これまで考えられていた分布域からまったく外れた場所で再発見されたのです。
当時これは大きなニュースになったのでしょう。
「ババリアマツネズミ」の絶滅した原因
ババリアマツネズミは、1962年に一度絶滅が宣言されていますが、その原因として考えられるのは人間による土地開発だといわれています。
ババリアマツネズミの生息地であった「ガルミッシュパルテンキルヒェン」は、中世より水運の要所として利用されていました。
19世紀にはバイエルン王国の領土となり、鉄道が結ばれ、リゾート地として発展しています。
また、1936年には冬季のオリンピックが開催されたことも有名です。
こうした華やかな歴史の一方、土地開発が勧められたことにより、ババリアマツネズミの生息地が失われ、餌が不足し、種数が減少して絶滅に至ったのではないかと考えられます。
「ババリアマツネズミ」の生き残りの可能性
ババリアマツネズミは、絶滅が宣言されてから38年後、別の地域で再発見されている種です。
現在生き残りの個体数や群体数、規模は調査中とのことで、詳しい情報はありませんが、生存個体数は多くはないと推測できます。
しかし、こういった絶滅が宣言された後の再発見のニュースは、他の絶滅種の生き残りの可能性を示唆する明るいニュースでもあります。
特にババリアマツネズミのような小型で活発な生き物ほど、生存している種の確認が難しい場合があったのではないでしょうか。
そして、まったく別の場所から発見されているといったことからも、これからもまた別の場所で再発見される可能性は十分にあると考えられます。
生き物たちは、私たち人間の想像を超える能力を持ち、厳しい自然の中で生き延びています。
こうして生き延びた生き物たちを大切に、生き物の多様性を維持していきたいものです。