「ピレネーアイベックス」とは
ピレネーアイベックスは、偶蹄目ウシ科ヤギ属に属する、ヤギの仲間です。
スペインアイベックスの亜種とされており、ピレネーアイベックスを含む4亜種に分類されています。
そのうち2亜種はすでに絶滅しており、ピレネーアイベックスは2000年に絶滅したとされています。
別名、「ブカルド」や、「ピレネーアイベロン」ともよばれていたようです。
現在も生き残っているスペインアイベックスよりも体も角も大きいことが知られています。
角の大きさは、31インチ(約78cm)もあり、角と角の間の距離は16インチ(約40cm)もあったようです。
体の大きさは、成熟したオスで150cm、肩の高さが70cm、体重は58kg~68kgもあったようです。
体色は夏と冬で異なり、夏ははっきりとした黒い斑点がみられます。
それに対し、冬は灰色がかった茶色をしています。冬の間のほうが毛皮は厚く、首の上部に短く硬いたてがみが特徴的です。
「ピレネーアイベックス」の分布、生息地
ピレネーアイベックスは、イベリア半島北部の大部分に生息していました。
また、アンドラやスペイン、フランスに位置するピレネー山脈や、カンタブリカ山脈東部でも確認されています。
夏の間は、低木植生と小さな松が点在する、岩だらけの山原と崖で過ごしています。
それに対し、冬の間は、雪のない高地の牧草地で過ごしていたようです。
そういった場所で、主にハーブや草などの植生を食べて生活していました。
基本的に群れで生活しており、10~20匹の、メスと若い個体のグループと、6~8匹のオスのグループにわかれていたようです。
「ピレネーアイベックス」の絶滅した原因
ピレネーアイベックスは、17世紀より急激に減少し、1913年には、スペインにあるオルデサバレーという場所の群れのみになり、2000年には絶滅したとされています。
絶滅した正確な原因はわかっていませんが、病気や他の野生動物との餌や生息地の奪い合いなど、様々な要因が重なったのではないかと考えられています。
また、ピレネーアイベックスの角は非常に大きく、高額で取引されることも多く、需要が絶えませんでした。
そのため、多くのハンターたちがピレネーアイベックスの捕獲を行ったようです。
こうした人間による影響も大きかったのではないかと推測できます。
「ピレネーアイベックス」の生き残りの可能性
ピレネーアイベックスは、絶滅が宣言された後に目撃情報もなく、生き残っている可能性はきわめて少ないと考えられます。
しかし、最新の研究により、再生存の可能性も示唆されています。
最後に生存が確認されたピレネーアイベックスは、「セリア」と名づけられたメスの個体でした。
この「セリア」が亡くなる前に、科学者たちにより皮膚細胞が集められ、液体窒素で保存したのです。
この細胞を利用し、2009年にはピレネーアイベックスのクローンの作成が行われました。
細胞を生きているヤギに着床させるというものでしたが、この試みは失敗を繰り返し、唯一成功して出産したヤギの赤ちゃんは、肺の欠損が認められ、誕生後たったの7分で死亡してしまいます。
現時点ではクローンとしての絶滅種の再生の技術は出来上がっていませんが、こうした試みにより、今はもう見ることができない生き物に出会える可能性はあるのかもしれません。