絶滅危惧種 PR

【フォッサとは】特徴や生息地・絶滅危惧種になった原因を紹介!

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「フォッサとは、どんな生きもの?」

「フォッサは絶滅危惧種なの?」

フォッサは、マングースに近い肉食の哺乳類で、マダガスカル島の固有種です。

マダガスカルにはフォッサにまつわる数々の言い伝えがあります。フォッサが残した匂いで家禽が死ぬ、家の中に忍び込んで赤ちゃんを盗む、眠っている人をなめて深い催眠状態に陥れる、などなど。

不気味なイメージを連想させるフォッサは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでVU(Vulnerable:危急)「絶滅の危機が増大している」に掲載された絶滅危惧種です。

最後まで読んでいただくと、フォッサの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「フォッサ」とは

フォッサは、食肉目マダガスカルマングース科フォッサ属に分類されています。マダガスカルの食肉目は、全てマダガスカルマングース科の動物で、フォッサはその最大種です。

フォッサは森林に生息し、非常に敏捷で滅多に人目につかないため、動物学者の間でも最近までは夜行性と信じられてきました。観察が困難なフォッサですが、少しずつ生態が明らかになっています。

「フォッサ」の特徴

フォッサはマングースの仲間ですが、細身でしなやかな体型はむしろネコに似ています。鼻から尾の先までの体長は1.2〜2m、体重9〜12kgで、メスよりもオスの方が重いのが普通です。

胴体と同じくらいある長い尾は、木々の間を素早く移動する際や、狩りの時に役立ちます。体毛は短く、密集しなめらかで、金色から赤褐色まで個体差があり、腹部はやや明るい色です。

頭部の前方に比較的大きな眼があり、両眼視により獲物の距離を把握して狩りをします。鼻先はイヌ、丸い耳はイタチのようですが、鋭い歯と出し入れできる爪をもつ点はネコと似ています。

このように、フォッサは他の動物を想像させる特徴をもつ、ユニークな生きものです。

「フォッサ」の食べもの

フォッサは、食物連鎖の頂点に立つ、マダガスカルで最大の肉食動物です。主な獲物はキツネザルですが、鳥や爬虫類、イノシシからネズミまで何でも食べることが知られています。

キツネザルを捕まえることができるフォッサは、ジャンプしたり、走り回ったり、突進したりと、最も素早いキツネザルよりも機敏です。

フォッサの狩りは待ち伏せ型で、獲物が近づくと前肢と爪を使って獲物を捕まえ、鋭い歯で噛みつきます。樹上でも、地上でも狩りをすることができる有能なハンターです。

フォッサは、多様な食性をもち、マダガスカルの複雑な食物連鎖の中で繁栄してきました。食物連鎖の頂点に位置する他の捕食動物と同様に、下位の生物の個体数を生態系が許容する範囲内に調整するという重要な役割を果たしています。

「フォッサ」のくらし

一般的に、単独行動をする肉食動物は研究が非常に難しく、フォッサの生態はほとんど知られていません。最近まで夜行性であると信じられていましたが、最近の研究では、昼夜を問わず狩りをしたり休んだりすることが知られています。

フォッサは、力強い脚と爪をもち、長い尾でバランスをとりながら木々の間を簡単に移動することが可能です。ほとんどの時間を森林の樹冠で過ごしますが、地上でも快適に生活できます。1日に最大26km移動することができるとのことです。

縄張りや自分の位置を示すために、胸部と尾の付け根の下にある臭腺を使って、岩や木、地面に匂いをつけます。

フォッサは繁殖期以外は単独で行動しますが、2010年に3匹のオスが協力してキツネザルを捕らえる様子が観察されました。また、2015年には、東部の熱帯雨林でもオスが群れをなすことを示す写真が撮影されています。

このように、オスのフォッサは獲物を狩ったり縄張りを守ったりするために、他のオスと協力することもあるようです。

まだまだ謎が多いフォッサの生態は、研究対象としても興味深いかもしれません。

「フォッサ」の繁殖

フォッサの繁殖期は通常10~12月で、マダガスカル西部の落葉樹林では、オスとメスが毎年同じ場所に集まり、交尾することが科学者によって発見されました。

メスの妊娠期間は約3か月で、1回の出産に生まれる子どもは2~4頭です。出産が近づく12~3月に、メスは古いシロアリの塚、岩の割れ目、木の洞などに巣を作ります。

生まれたばかりの子は白色で歯はなく、3~5か月は巣穴から出ません。生後2~3週間で目が開き毛が黒くなり始め、ゆっくりと成長します。少なくとも1年は母親の世話のもとで成長し、メスは誰の助けも借りずに子育てします。

子どもが独り立ちするのは2歳ごろで、成熟して繁殖できるようになるのは4歳前後です。

「フォッサ」の分布・生息地

画像引用:UICN Red List Fosa

フォッサはマダガスカル固有の生物で、世界中どこを探してもマダガスカル以外では見られません。

フォッサの獲物となる生物は森林に生息しているため、フォッサも熱帯林の環境に支えられています。現在、マダガスカルの森林の面積は、かつての10%足らずにまで減少してしまいました。

フォッサなどの野生生物の生息に適した森林は、保護区として守られています。その中でもフォッサが安定して生息できる面積を有するのは、マサオラ-マキラとザハメナ-マンタディア-ヴォヒドラザナの2か所です。

保護区内における成体の個体数は、合わせて約2,600頭と推定されています。マサオラ-マキラではカメラを用いた調査が実施され、その結果、成体の個体数は、千頭あまりと推計され、フォッサが存続する最後の拠点である可能性が高いことがわかりました。

今後、もう一つの主要な生息地であるザハメナ-マンタディア-ヴォヒドラザナでも、より正確な個体数を把握できれば、効果的な保全戦略をたてることができるでしょう。

「フォッサ」が絶滅危惧種となった理由

フォッサの生息数が減少している原因は、主に生息環境の破壊と密猟です。

何百万年もの間、地理的に孤立していたマダガスカルは、フォッサを含む数多くの固有種の進化を育んできました。フォッサがマダガスカルの生息地で存続できなければ、地球上から姿を消すことを意味します。

フォッサの生息に大きな影響を及ぼしている要因について、以下にそれぞれ説明していきます。

森林の減少

農地や牧草地、居住地とするための森林破壊は、フォッサの生息地を減少させる大きな脅威です。マダガスカルでは伝統的に焼畑農業が主流であり、森林破壊の一因となっています。

残された森林は断片化しており、ほとんどがフォッサの個体群を維持できる十分な面積ではありません。

フォッサは食物連鎖の頂点に位置する肉食獣ですが、餌である熱帯林の生物の増減に依存しているため非常に脆弱です。よって、熱帯林の減少による生物多様性の低下は、フォッサの生息状況に大きく影響します。

同時に心配されるのが、生息域の減少から生じる悪影響です。フォッサが過密になることで、餌をめぐる競争の激化で負傷や死亡率が増加したり、メスの縄張りの縮小により子どもの死亡率が増加したりする可能性があります。

また、成体の移動が限られることで繁殖相手と遭遇するチャンスが減るため、今後繁殖状況にも影響が現れるかもしれません。

フォッサを守るためには、マダガスカルの多様な生きものの生息環境である熱帯林を保全し、良好な生息地どうしをつなぐことが重要です。

「フォッサ」の密猟

フォッサを絶滅に追い込む可能性があるもう一つの要因は、密猟です。フォッサを捕獲してブッシュミートとして消費することは法的に禁じられていますが、実際には違法行為が後を絶ちません。

体重の大きい種は、ブッシュミートとして多く狩猟される傾向があるため、リスクが特に高くなります。北東部の生息地であるマサオラ-マキラ保護区周辺では、キツネザルとフォッサの肉の消費が広まっていることが調査で明らかになりました。

非一致カウント法を用いた調査では、調査前年に53%の世帯がキツネザルの肉を食べ、24%がフォッサの肉を食べていたという結果となっています。

さらに、生息地の減少と餌不足によりフォッサは周辺の村にも出没し、家禽を襲うことが増えました。マダガスカルは世界で最も貧しい国の一つであり、1羽の鶏も人の食糧として貴重なものであるため、フォッサを害獣として駆除する動機となっています。

地域住民の意識と行動を変えてもらうには、啓発活動などを通して野生生物の価値と保全の意義を根気よく伝えていくほか、住民の生活状況を改善する工夫も必要です。

「フォッサ」の保護の取り組み

フォッサは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでVU(Vulnerable:危急)「絶滅の危機が増大している」に掲載されています。

また、希少種保護の国際的な取り決めである「ワシントン条約」の付属書Ⅱに掲載されています。よって、商業目的のための国際取引には、生息状況に悪影響を及ぼさないという証明と輸出国の許可が必要です。

そのほか、現地で実施されている保護の取り組みをご紹介していきます。

生息地の保護

フォッサを保全するためには、重要な生息地を保護区として管理するとともに、保護区同士を結ぶ回廊を確保することが重要です。これまでマダガスカルでは、積極的に保護区が指定されてきています。

2003年9月に南アフリカのダーバンで開かれた世界公園会議において、当時のラヴァルマナナ大統領は、マダガスカル国内の保護区の面積を5年で3倍にすると宣言しました。

その後のアクション・プランにおいて、2012年には国土の1割以上にあたる600万haにまで増やすという大胆な数値目標が示され、一定の成果をあげています。2016年までに保護区とされた面積は710万haにのぼり、これは2003年の保護区面積の4倍以上です。

マダガスカルの財政規模は小さく自国のみでの保護管理には限界がありますが、海外の団体の協力を得ることで運営を可能にしています。

ある推計によれば、2003年の宣言以降、マダガスカルの自然保護行政に対し、2年間で3千万ドルの援助がもたらされたとのことです。

さらに、保護区を増やすことができた一因として、貧困対策を目標にしたことがあげられます。保護区内での活動を制限するのではなく、保護区の資源管理などによりコミュニティが利益を得られるように支援したのです。

保護区の設置や管理には地元の理解と協力が不可欠ですが、地域住民がメリットを実感することが鍵となったといえるでしょう。

エコツーリズム

エコツーリズムは、フォッサの保全を促進しながら地元コミュニティに収入をもたらす手段の一つです。

固有で希少な野生生物を一目見ようと海外から観光客が訪れ、生物多様性の豊かさに感動し対価を支払うことで、住民にも森林や希少種の価値が再認識されます。

フォッサを単に害獣として認識していた住民が、生きたフォッサに経済的価値を見出せば、対応が大きく変わる可能性があるでしょう。

マダガスカルの森林と生物多様性はマダガスカルの財産です。観光客は保全のための対価を支払うべきであり、利益が適切に地元経済に還元されることが理想的です。実際に、地元コミュニティの人々は、ガイドや食事の提供、荷物運搬などの仕事を担っています。

養殖プログラムの提供

人の食糧としてフォッサが消費される現状を変えるために提供されているのが、魚や鶏の養殖プログラムです。

マダガスカルの農村部の多くの世帯では、食事に十分なたんぱく質を取り入れることができないため、少量のブッシュミートであっても貴重な栄養源となります。しかし、鶏や魚を養殖してたんぱく質源にできれば、希少な野生生物を捕獲する必要はなくなるでしょう。

養殖プログラムの内容は、飼育設備の建設・維持方法の助言などから、初期投資としての鶏や魚の提供、問題が起きた時のサポートまで、多岐に渡るものです。

住民の安定的な食糧確保と生活の質の向上を支援することで、養殖プログラムは間接的に希少種の保護に役立っています。

調査研究

フォッサの保護計画を立てるためには、マダガスカル全土での徹底的な調査が必要です。同じくマダガスカル固有の希少種であるキツネザルに比べると、フォッサに関するデータは圧倒的に不足しています。

生き残っているフォッサがどれだけいるのか、個体群が生存可能な場所はどこなのかは、研究者にも分かっていません。

残されたフォッサの生息数や密度、雌雄の性比、近縁関係、死亡率、地域ごとの状況などを把握することが急務です。現状を正しく把握し、生息地に応じた保全戦略を策定することが望まれます。

私たちにできること

日本から遠く離れたマダガスカルの自然も私たちの生活と無関係ではありません。マダガスカルからの輸入品が、どのような過程で生産されたものなのか、関心をもつことが大切です。

マダガスカルの農産物であるカカオやバニラビーンズを通してマダガスカルの生産者とつながる日本の菓子メーカーは、SDGsを意識した取り組みを広げようとしています。

他にも日本企業が関わる例としてあげられるのは、蓄電池などに不可欠なレアメタルを採掘する事業です。この事業では、フォッサが暮らす環境の生物多様性を守りながら事業を進める配慮がなされています。

マダガスカルの人々のためには経済の底上げも重要です。自然環境への悪影響を最小限に抑え、生物多様性の保全と生産活動を両立させる取り組みの徹底が欠かせません。

さらに、私たちができることとして、フォッサの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも考えられます。代表的な団体をご紹介します。

なお、2024年3月まで上野動物園でフォッサを見ることができましたが、国内で唯一のフォッサは高齢のため18歳で死亡してしまいました。

マダガスカルの人々はもちろん、マダガスカルの自然に関心をよせる世界中の人の協力により、熱帯林が健全に維持されフォッサが絶滅の淵から救われることを願ってやみません。

フォッサのことを知ることも、フォッサを守るための一歩です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。