冷たい風が吹き荒び、荒涼とした険しい山々に囲まれた不毛の大地・フォークランド諸島。
かつてこの島では、小さくとも勇敢な肉食獣が暮らしていました。
その名を「フォークランドオオカミ」。イギリスの探検家であるジョン・デイビスにそう名付けられた彼らは、その孤独な島でどのように暮らし、そしてどのような最期を迎えたのか。
今回はその姿に迫ってみたいと思います。
「フォークランドオオカミ」とは
身体的特徴
体長約90㎝、体重15㎏と、オオカミの中ではかなり小型の部類だったようです。
成体の柴犬より一まわり大きいぐらいだと言えばイメージしやすいでしょうか。
体毛は黄褐色で、尾の先は白っぽくなっています。
生態的特徴
オオカミを含む肉食獣はふつう、他の動物を食べて生きています。
しかし、気象や地理的な条件の都合上、フォークランド諸島には餌になるような草食獣はほとんど存在しませんでした。
そのためフォークランドオオカミは、雁やペンギンなど地上で暮らす鳥類や、アザラシ、昆虫、時には海岸の腐食肉を食べて暮らしていたと言われています。
現存するオオカミの種がシカやイノシシ、ウサギといった草食獣を狙うことを考えれば、彼らが如何に特殊な食生活をしていたかがわかると思います。
また、詳しいことはわかっていませんが、巣穴で暮らしていたという説もあるようです。
「フォークランドオオカミ」の生息地・分布
フォークランドオオカミは、フォークランド諸島唯一の固有哺乳類です。
この島々は、東フォークランド島と西フォークランド島の2つの大きな島と、776の小さな島からなっていますが、フォークランドオオカミは主にこの2つの島で暮らしていたようです。
「フォークランドオオカミ」の絶滅した原因
フォークランドオオカミの絶滅は、かの有名なチャールズ・ダーウィンも予言するところのものだったそうです。
前述のとおり、在来の草食動物の少ないフォークランド諸島では、彼らの餌は十分ではありませんでした。
1833年にフォークランド諸島を訪れたダーウィンは、このような孤島にどうして彼らがたどり着いたのか疑問に思うと同時に、これから移民が増えていけば、いずれ絶滅してしまうだろうと予言したそうです。
同時期にイギリス領となったフォークランド諸島には、羊などの家畜を伴ってたくさんの入植者がやってきました。
人を恐れない性質の彼らは、食料を盗んだり、家畜を襲ったりして人々を悩ませました。
それが災いして彼らの多くは撲殺されるなどして、徐々にその数を減らしていきました。
その結果、ダーウィンの予想通り、1870年代末には絶滅してしまったのです。
実はイヌ科の動物の絶滅は、有史時代においてはフォークランドオオカミが初めてです。
このことは、人の行動によるところももちろん大きいですが、環境条件や種そのものの特性を考えれば、ある程度必然的なものだったと言えるかもしれません。
「フォークランドオオカミ」の生き残りの可能
記録にある通りであれば、1876年に最後の一匹だと思われる個体が殺されて以降、その姿は確認されておらず、現在では11体の標本を残すのみとなっています。
生体資料による研究が進められる前に絶滅してしまったため、生態や進化に関しては、謎を多く残したままです。
まとめ
大陸から遠く離れた孤島、フォークランド諸島。
そこで暮らしていた小さな狼たちは、人間の身勝手な行動と、また自らの特性により、その身を亡ぼすことになりました。
この哀れな肉食獣がどうして、そのような土地で暮らすことになったかについては、現在においても研究が進められているそうです。