自然と共に生きていたマオリ族にとって、ホオダレムクドリは神聖な存在でした。
その美しい羽根を飾りとして身に着けることができたのは、一族の長だけ。
しかし、20世紀に入り、その神話は人々によって打ち砕かれることになります。
彼らは一体どのようにして絶滅への道筋をたどったのか。
今回は彼らの暮らしと、その滅びへの歩みについてまとめてみました。
「ホオダレムクドリ」とは
身体的特徴
一番の特徴は、何と言ってもくちばしの根元にある肉垂。
ニワトリのクチバシの下にくっついている、赤いものを想像してもらえれば判り易いかと思います。
体長は50㎝ほどで、長い尾羽は白く縞のような模様がついていました。
また、雄と雌でクチバシの形が大きく変わっていたため、当初研究者は別々の種類の鳥だと勘違いしていたほどです。
メスのクチバシは細長く湾曲し、雄のものはキツツキのそれとよく似ていたそうです。
そして、フルートのように美しい鳴き声をしていたんだとか。
生態的特徴
雨や湿気で朽ちた老木の内側にいる虫を取って食べていました。
オスとメスはそれぞれクチバシの形の違いを活かして虫を取っていたそうです。
オスがかたいクチバシで木の皮を剥ぎ、雄が届かない狭いところに居る虫をメスの細いクチバシで掻き出して捕まえる……という風に。
つがいごとに縄張りをもって暮らしていましたが、この縄張りにかなりの広さが必要だったため、もともと個体数はそれほど多くなかったと言います。
「ホオダレムクドリ」の分布・生息地
ホオダレムクドリは、ニュージーランド北島の原生林の奥深くで暮らしていたそうです。
雨の多い森を好んだため、彼らは別名「雨鳥」とも呼ばれていました。
「ホオダレムクドリ」の絶滅した原因
1835年、彼らの存在はある宣教師によってヨーロッパに伝えられました。
そしてその後ニュージーランドにやってきた移民が原生林を開墾したため、彼らは住処を追われてしまいました。
銃による狩猟が一般的になり始めていたことも、ホオダレムクドリの数を減らすのに拍車をかけていきます。
決定打となったのは、20世紀初頭に後の英国王となるヨーク公がニュージーランドを訪問した際に、贈られたホオダレムクドリの羽を帽子に付けてしまったことでした。
これを見た民衆は、自分のファッションにも彼らの美しい羽根を取り入れるべく、無計画な乱獲を始めたのです。
「ホオダレムクドリ」の生き残りの可能性
ホオダレムクドリの最後の目撃記録は1907年12月27日。
それ以降見つかったという報告はないため、完全に絶滅してしまったものとされています。
まとめ
マオリ族の伝説では、メスのクチバシはその美しい尾羽の手入れをしやすいように、長によって長く細く伸ばされたのだと言われています。
その羽を美しく整えたばかりに、絶滅させられてしまう未来が来るなど、マオリ族も彼らも想像すらしていなかったことでしょう。