絶滅危惧種 PR

【マンドリル】生息地や絶滅の原因・生き残りの可能性についてのまとめ

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「マンドリルってどんな生きもの?」

「マンドリルはどこにすむ動物?動物園で見られるの?」

「マンドリルは絶滅危惧種なの?」

日本人にはあまり馴染みのないマンドリルですが、ディズニー映画「ライオン・キング」に登場するラフィキのモデルとなった動物だと聞けば、ピンとくる人がいるかもしれません。

ラフィキは主人公シンバを導く呪術者めいたキャラクターで、顔を彩る鮮やかな模様がマンドリルの特徴をとらえています。

マンドリルはアフリカ大陸の一部に生息するサルの仲間です。

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでVU(Vulnerable:危急)に記載されており、高い絶滅の危機にさらされています。

最後まで読んでいただくと、マンドリルの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「マンドリル」とは

マンドリルは霊長目オナガザル科マンドリル属に分類され、マンドリル属はマンドリルとドリルの2種のみで構成されています。

かつてマンドリルはヒヒと同じパピオ属に分類されていましたが、最近の研究によりマンドリル属が独立しました。

マンドリルの生息地は、アフリカ大陸西部の赤道直下の地域に限られています。

マンドリルとドリルは体型が似ていて生息地も近いですが、マンドリルは体色がカラフルなのが特徴です。

「マンドリル」の特徴

マンドリルのオスは体長約80cm・体重30〜50kg、メスは体長約55cm・体重約12kgで、雌雄でかなり大きさが異なり、オスはメスの2〜3倍ほどの大きさになります。

マンドリルは、赤く目立つ鼻筋の両側に青く盛り上がった縞模様の部分があり、金色の髭を持つ点では雌雄で同様ですが、オスの方がより鮮やかな色合いです。

体毛は褐色〜灰色で腹面は白色ですが、お尻には体毛が無く肌が露出しており赤・青・紫色のパッド(尻だこ)があります。

顔の色もお尻の色も、支配的な地位にいるオスほどカラフルです。

地位が低下するほど体色の鮮やかさが薄れていき、 メスはよりカラフルなオスを好む傾向があります。

非常に長い腕と犬歯は森の中で幅広い餌を食べるのに役立ち、首の横にある長い頬袋は満腹量の食べものを貯めることが可能です。

マンドリルは、一度見たら忘れられないほど印象深い姿をしたサルの仲間といえます。

「マンドリル」の暮らし

マンドリルは、雨期と乾季がある熱帯の季節林において、大集団の群れで暮らしています。

マンドリルの天敵はヒョウやアフリカニシキヘビなどで、天敵を避けるために木の上で眠りますが、日中のほとんどを過ごすのは地上です。

日の出とともに目を覚まして地上に移動し、小動物や昆虫を探したり根や塊茎を探して地面を掘ったり、木に登って果物や木の実をとったりして食べものを手に入れます。

餌を得る時は大人のメスと子どもが一緒に行動し、オスは単独または別々の小グループで採食するのが普通です。

マンドリルが暮らしていくためには、群れ全体を満足させる量の餌と安心できるねぐらを作れる豊かな森林が必要不可欠といえます。

「マンドリル」の群れ社会

マンドリルは、600〜800頭という霊長類の群れとしては最大の集団を作ります。

この中のオスは40頭ほどで、その他大半を占めるのがメスです。

群れの内部は、支配的なオスをトップとする複数の小集団に分かれていて、それぞれの小集団にもオス・メス両方で明確な階層があり複雑な社会を作っています。

群れで暮らす他のサルと同様、マンドリルにとっても大切なコミュニケーション手段となっているのがグルーミング(毛づくろい)です。

グルーミングでは、相手と向き合って座り、指先を使って相手の体毛から寄生虫や汚れを取り除きます。

マンドリルの支配的なオスやメスが地位が低い個体のグルーミングをする行動も見られ、群れの中の上下関係を維持するだけでなく、社会的絆の強化にも役立っているようです。

マンドリルは、複雑な発声やボディランゲージもコミュニケーションに使っており、挨拶・威嚇・服従・警戒などを表現しています。

群れの中で支配的なオスは、発情期に優先的にメスに近づくことができますが、群れを脅威から守り餌を求めて導く責任も負っています。

マンドリルの群れには、人間社会にも通じるような個体同士の関係性が存在するようです。

「マンドリル」の食性

マンドリルの餌はほとんどが果実で9割を占めますが、植物の種子・昆虫・トカゲやげっ歯類などの小さな脊椎動物、ミネラル補給のために土も食べることがあります。

マンドリルの好物はイチジクなどの果実ですが、果実が少なくなる3月〜8月に餌としているのが地面に埋まっている種子や地下茎などです。

果実が実る時期は餌が豊富な場所へと移動し、果実が乏しい時期は食物のレパートリーと行動範囲を広げて乗り切っていることが最近の調査で分かりました。

マンドリルがさまざまな果実を食べて消化し移動することで、果実の種子が広域に分散し新たな場所で芽ぶくことができます。

マンドリルが豊かな森林から餌を得ているのと同時に、マンドリルの存在によって森林も維持されているのです。

「マンドリル」の繁殖

マンドリルの繁殖期は通常2年に1回で7〜10月に1週間ほど続きますが、一夫多妻制で支配的なオスがより多くのメスと交尾する傾向があります。

妊娠期間は6か月ほどでメスは12月〜4月に出産し、一度に生まれる子供は1〜2頭です。

生まれたばかりの赤ちゃんは母親にしがみついて移動し、数週間は母乳で育ちます。

マンドリルの子どもは動けるようになると周囲の環境を探索し始め、群れのメンバーと交流することで社会に適応していきます。

生後6〜12か月で乳離れし、母親から完全に独立するのは2年後です。

オスは子育てを手伝いませんが、叔母・姉妹・いとこなど群れのメスが母親の子育てを手伝い、赤ちゃんに餌を与えるなどの世話をします。

メスは4歳、オスは7歳で性成熟し、野生下での寿命は20年です。

産まれた子どもが群れの中で社会性を身につけていく点など、人間社会との共通性を感じずにはいられません。

「マンドリル」の分布・生息地

マンドリルは、アフリカ大陸西部の赤道直下の地域に分布しており、生息地はガボン・
カメルーン、赤道ギニア、コンゴ民主共和国です。

主な生息環境は雨季と乾季があるアフリカ熱帯季節林で、海から急峻な丘陵地帯まで広がる密林を好みますが、時にはサバンナを横切って移動し川辺や耕作地でも見られます。

マンドリルの生息地を南北・東西で結び付ける回廊となっているのがサナガ川・オゴウェ川・イヴィンド川です。

マンドリルの生息数は、明らかになっていません。

見通しの悪い熱帯林に生息し、また行動範囲も広大であるため個体数の把握や推定値の産出が困難であることが原因と考えられます。

ある研究者の推定によると、マンドリルの個体数は24年間で30%減ったとのことです。

「マンドリル」が絶滅危惧種となった理由

マンドリルは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでVU(Vulnarable:危急)に掲載された希少種です。

つまり、マンドリルを保護するための大きな努力がなされなければ、この種が絶滅の危機に瀕する可能性が高いことを意味します。

マンドリルが絶滅の危機に瀕するほどに、生息数を減らしている理由として考えられるのは次の通りです。

  • ブッシュミート目的の密猟
  • 生息地の破壊
  • 地球温暖化による気候変動
  • 人由来の感染症の蔓延

アフリカではマンドリルの肉は珍味とされているほか、伝統医学の薬として利用されることもあります。

需要はアフリカのみならずヨーロッパにも密輸されているほどで、取り締まりにも関わらず密猟の被害は深刻です。

マンドリルが生息する熱帯林は、人の定住・農業・採掘などの開発により急速に伐採が進んでおり、マンドリルの生息地が分断・縮小されています。

大きな群れで暮らすマンドリルにとって、十分な餌資源を提供してくれる森林は必要不可欠です。

また、開発は密猟者が森林のより奥地にまでアクセスすることを可能にしてしまうほか、人との距離が狭められることで人由来の感染症にさらされるリスクも高まります。

地球規模の気候変動による気候の変化で、森林を構成する植物の種類が変化しマンドリルの餌が不足する可能性も否定できません。

このように人間の活動が、直接的・間接的にマンドリル減少の要因となっているのです。

「マンドリル」の保護の取り組み

マンドリルは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでVUとされているほか、希少種保護の国際的な取り決めである「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)で付属書Iに掲載されています。

よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

マンドリル生息地の政府やNGOはマンドリルと生息地保全のために、次のような取り組みをしています。

  • 熱帯林の保護
  • エコツアー
  • 密猟防止対策
  • 繁殖プログラム

国連が支援する中央アフリカ森林イニシアチブ(CAFI)は、マンドリルの主たる生息地であるガボンに対し、熱帯林保護のため1億5000万ドルの拠出を決めました。

ガボン政府は、国土の90%を占める森林の保護に積極的に取り組んでおり、厳しい森林管理基準により森林破壊の抑制に成果をあげています。

また、国立公園局が力を入れているのが、エコツアーなどマンドリルを中心とした観光開発です。

NGOの協力を得ながら、地元の村にも経済効果が還元されるよう地域住民からエコガイドの人材を育てて採用しています。

マンドリルの生態把握のためには、個体毎のデータを得られる発信機つきの首輪を装着することが有効です。

ガボン政府は、マンドリルの首輪装着のほか生息地にセンサーカメラを設置し、霊長類学者に研究の機会を提供しています。

また、マンドリル生息地近隣の林業会社と連携して実施されているのが、密猟対策の監視モニタリングです。

地域住民がマンドリルや熱帯林の価値について知ることや、多くの目でマンドリルとその生息環境を見守ることが、密猟防止につながっていくでしょう。

さらに、飼育下で繁殖したマンドリルを、野生に再導入する取り組みも成功しています。

2008年に飼育下で繁殖した36頭のマンドリルがレケディ公園に放たれましたが、2年後にも安定した生存・繁殖が確認されました。

このように地域住民・NGO・国家が連携した取り組みが、地域のコミュニティに受け入れられながら地道に続いていくことが期待されます。

私たちにできること

マンドリルは遠く離れたアフリカに生息する野生動物ですが、国内では20か所以上の動物園で約70頭が飼育されています。

今まで漠然とマンドリルの展示を見たことがあっても、記憶に残っていないという方も多いのではないでしょうか。

本来は大きな群れで暮らす生態をもっていながら、少数で飼育されているのは心苦しいことですが、マンドリルを実際に間近でじっくりと観察することできるチャンスです。

マンドリルを飼育している動物園は次のとおりですが、最新情報はそれぞれの公式サイトでご確認ください。

また、国内外でマンドリルの保護活動をしている団体に寄付をしたり、現地ツアーや保護活動に参加したりすることも考えられます。

マンドリルの生態や生息地について関心をもち情報を得ることが、マンドリルを絶滅の危機から救う第一歩です。

マンドリルや熱帯林保護に力を入れているガボン政府とNGOにも関心をもって頂ければ幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。