絶滅危惧種 PR

【ワオキツネザルとは】特徴や生息地・絶滅危惧種になった原因を紹介!

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「動物園でおなじみのワオキツネザルが絶滅危惧種?」

「野生のワオキツネザルの生息地はどこ?」

ワオキツネザルは、全ての霊長類の中で最も広く飼育されており、日本の動物園でもよく見られる種です。

世界中の動物園におよそ2,800匹が存在すると推定されますが、本来の生息地であるマダガスカルにおける生息数は、飼育されている数よりも少なくなっています。

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでのランクはEN(Endangered:危機)であり、世界で最も絶滅の危機にひんしているキツネザルの1つです。

最後まで読んでいただくと、ワオキツネザルの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「ワオキツネザル」とは

ワオキツネザルは、霊長目キツネザル科に分類される原猿類の一種です。

動物界でもっとも進化を遂げた霊長目の中で、原猿類は「最も原始的なサル」のグループで、ツパイ・メガネザル・キツネザル・ロリスなどが含まれています。キツネザルの仲間が生息するのは、マダガスカルと近隣の小島のみです。

ここでは、ワオキツネザルの特徴や生態について解説していきます。

「ワオキツネザル」の特徴

ワオキツネザルは、体長36〜45cm、体重は2〜3.5kg、尾長50〜60cmで、身体よりも長い尻尾が特徴です。尻尾には白と黒の輪が交互に13 本あり、顔つきがキツネのようであることから、ワオキツネザルと呼ばれています。

背中の色は黄褐色から灰色まで個体差があり、手足は灰色、頭と首は暗灰色、腹部は白色です。顔は白く、鼻は黒色、目の周りは暗色となっています。

人間の手と同じように、親指と他の4本の指を向かい合わせて物を握ることが可能です。足の親指は他の指より大きく、木から木へと飛び移るときに力強くふみ切ることができます。

原猿類の仲間は、顎からまっすぐに突き出た 6 本の切歯と犬歯をもち、これらの歯を櫛のように使って自分や仲間の毛づくろいをします。

ワオキツネザルは、ニホンザルやチンパンジーなどから連想する猿のイメージとは異なる特徴をもった動物といえるでしょう。

「ワオキツネザル」の食べもの

ワオキツネザルは雑食で、植物の葉や果実、花、樹皮などのほか、昆虫や小型の動物など多様なものを餌としています。

野生では、特にタマリンドの果実と葉が大好きです。タマリンドは北アフリカ原産で、半乾燥地帯や熱帯地域で広く見られるマメ科の植物であり、食用として栽培もされています。

生息地では季節によって入手できる餌が変化するため、ワオキツネザルは年間を通じてさまざまな食料源を利用しなければなりません。

「ワオキツネザル」の群れ

ワオキツネザルの群れは、10〜15匹のオスとメスから構成されています。メスは一生を生まれた群れで過ごしますが、オスは3歳で性成熟すると群れを離れるのがふつうです。

これまでの調査から、オスが同じ群れに滞在する期間は平均3年程度であること、11年間同じ群れに滞在する例があることが報告されました。また、オスは2匹以上で移籍することが多いこと、移籍先は近隣の群れが多いことも分かっています。

主に樹上で生活する他の多くのキツネザルとは異なり、ワオキツネザルは約4割の時間を地上で過ごし、餌を求めて毎日最大約6kmの範囲を群れで移動します。

森の中を四足歩行で移動する時に、長い尻尾を高く上げながら歩きますが、これは群れからはぐれないようにするための目印です。

霊長類のなかでは珍しく、メスが餌を優先的に利用したり、交尾相手を選んだりすることができ、オスよりも優位です。

メスは全体的なリーダーシップをめぐって互いに争うことがあります。また、オスにも群れの中の序列がありますが、下位のオスでも交尾することができます。

メスは、血縁関係のないメスよりも、同じ群れの親族のメスとより密接な絆を持つことがわかっており、この社会的な絆の形成に役立つのが毛づくろいです。

ワオキツネザルは手首や胸に特殊な分泌腺があり、特にオスでよく発達していて、分泌腺を木にこすり付けて縄張りを示したり、餌探しのルートをマークしたりします。縄張りの境界付近では、他の群れに対して攻撃的になることが多いようです。

ワオキツネザルは、お互いに関わりながら群れという小さな社会を機能させ、群れに支えられて生きているのです。

「ワオキツネザル」のコミュニケーション

ワオキツネザルは嗅覚のほか、視覚や聴覚によってコミュニケーションをとっており、毛づくろいもその一つの方法です。

顔の表情の違いには、次のようなものがあります。

  • 目を大きく開いて見つめ、口を開けて歯を唇で覆う顔: 天敵を集団で襲おうとする、または危険を知らせる時の表情
  • 目を大きく開いて見つめ、口角を引き歯と歯茎をむき出しにして叫ぶ顔: 恐怖で逃げる時の表情
  • 沈黙して対象をじっと見つめ、眉はリラックスしているか上がり、口角を引いて歯をむき出しにした顔: 服従または友好的に接近する時の表情
  • 目を大きく見開き、唇をOの形に突き出す顔: 呼びかけや何かをねだる時の表情
  • トランペットのように唇を前に突き出した顔: 遠くに呼びかける時の表情

また、下記は鳴き声の使い分けの例です。

  • 子どもへの呼びかけ: 柔らかく喉を鳴らす
  • 団結の呼びかけ: 仲間が広く分散している時に猫のような声を出す
  • 縄張りの呼びかけ: 1km以上遠くまで聞こえる声で遠吠えする
  • 警戒: うなり声から始まり、その後吠えるように鳴く
  • 反発の呼びかけ: 相手に対し、断続的にうなる

表情や声でコミュニケーションをとるワオキツネザルは、人間と同じ霊長類に属する人に近い生きものとして、親しみが感じられるかもしれません。

「ワオキツネザル」の繁殖

ワオキツネザルの繁殖期は、マダガスカルでは4月中旬に始まり、メスの発情期はたった24時間です。メスは通常2〜4歳で最初の赤ちゃんを産み、その後は毎年1回出産します。

妊娠期間は134〜138日間で、出産のピークは9月です。出産数はふつう1匹で、餌が豊富な場合は双子が生まれることがよくあります。

多くのメスは死亡するまで繁殖を続けるため、長生きのメスほど生涯に多くの子を産みます。最も多いのは、一生のうちに13匹の子どもを産んだメスの例です。

赤ちゃんは、出産直後は母親の腹部にぴったりとくっついていますが、1〜2 週間後には母親の背中に移り、約1か月たつと次第に自立して一人で行動します。

赤ちゃんが固形食を食べ始めるのは、生後約1週間後です。5〜6か月後に完全に離乳するまでは、母親のところに戻って母乳をもらったり眠ったりします。

成熟したメスは全員、群れの中で子育てに関わるという点も、群れ社会のメリットといえるでしょう。

「ワオキツネザル」の分布・生息地

野生のワオキツネザルは、マダガスカル島の南部および南西部に分布しています。

マダガスカル島は、アフリカ大陸の東部に位置し、世界で4番目に大きな島です。マダガスカル島と周囲の島から、マダガスカル共和国がなりたっています。

マダガスカル島は8800万年前にアフリカ大陸から分かれ、孤立した状態が長く続いたため、動植物が独自の進化をとげました。日本でもよく知られているバオバブの木、アイアイなどもマダガスカル固有の種です。

ワオキツネザルは、固有種の宝庫であるマダガスカルを象徴する動物の一つとなっています。

「ワオキツネザル」の生息地

ワオキツネザルの生態は柔軟で、乾燥した落葉樹林、トゲ植物の低木林、川沿いの半落葉樹林、岩がちな乾燥地など、さまざまな環境に生息可能です。縄張りの広さは、6〜20haに及びます。

主な生息地は、次の保護区です。

  • Berenty Private Reserve
  • Andohahela National Park
  • Isalo National Park (Canyon des Makis)
  • Anja Reserve
  • Zombitse-Vohibasia National Park
  • Andringitra National Park

マダガスカルの保護区を訪れる機会があり運が良ければ、野生のワオキツネザルに出会えるかもしれません。

「ワオキツネザル」の生息数

最新の調査によると、野生のワオキツネザルの個体数は2,000〜2,500匹で、過去17年間で95%も減少しました。現在、野生のワオキツネザルの数は、世界中の動物園で飼育されている数よりも少なくなっています。

2000年には、IUCN(国際自然保護連合)によりEN(Endangered:危機)としてレッドリストにランクづけられました。

生息地では、ワオキツネザルの個体や生息地に悪影響を及ぼす要因が今も存在し続けています。

「ワオキツネザル」が絶滅危惧種となった理由

ワオキツネザルの生息数が減少している原因は、主に生息環境の破壊、密猟、移入種による捕食などです。

ワオキツネザルをはじめとするキツネザルの仲間は、マダガスカル固有の生きものなので、この生息地での絶滅は地球上から姿を消すことを意味します。

柔軟な適応能力をもち、比較的丈夫な種であるワオキツネザルが、本来の生息地で数を減らしているのは心配な事実です。

ワオキツネザルの生息に大きな影響を及ぼしている要因について、以下にそれぞれ説明していきます。

生息環境の破壊

マダガスカルでは、ワオキツネザルの生息環境である森林の90%以上がすでに消滅したと考えられており、今も森林の減少が進行しています。食料の確保のため、豊かな森林の生物相に依存しているワオキツネザルにとって、森林破壊は大きな脅威です。

マダガスカルにおける顕著な森林破壊は、19世紀末のフランスによる植民地化の際に始まり、森林は切り開かれ、コーヒーやバニラの栽培地へと転換されていきました。

その後も、農地や家畜用の新しい牧草地を拡大するために定期的に森に火を入れたり、材木や薪炭材とするために伐採したりすることにより、森林への圧力は増すばかりです。森林の消失は土地の保水力を低下させるため、洪水の頻発、土砂の流出なども引き起こしています。

さらに、気候変動の影響も心配です。干ばつが頻繁に発生すると、ワオキツネザルの餌資源である植物に深刻な被害が及ぶ可能性があります。

人間の活動による影響が直接的・間接的に作用し、ワオキツネザルの生息基盤が急激に失われているのです。

「ワオキツネザル」の密猟

ワオキツネザルは、食用として狩猟されるほか、ペットとしての売買も根絶に至っていません。

マダガスカルは、国民の約79%が1日1.9ドル以下で生活しており、多くの人々が食べていくのにも苦労しているという貧しい経済状況です。

また、2009年の軍事クーデター以降の政治不安や、特産物であるバニラの価格下落なども人々の生活に影を落としています。

野生のキツネザルの狩猟は禁止されていますが、食用のために狩猟したり、食糧難に備えて備蓄したりするのは仕方ないと考える人もいるかもしれません。さらに、海外からの観光客や裕福な地元の人々に対して、食事として提供するために密猟する例もあるようです。

キツネザルをペットとして飼うことも、当然違法です。しかし、ホテルやレストランでは、キツネザルを間近で見たいという観光客むけに、野生から捕獲したキツネザルを飼育している場合もあります。

キツネザルの違法捕獲は今も続いており、ワオキツネザルがペット取引市場の大部分を占めているという事実には胸が痛みます。

移入種による影響

人が持ち込んでしまった生物がワオキツネザルに悪影響を及ぼしています。

ワオキツネザルの本来の天敵は、肉食哺乳類のフォッサ、猛禽類のマダガスカルチュアホークやマダガスカルノスリ、大型のヘビであるマダガスカルボアなどです。そのうえ、さらにペットの犬や猫などが加わりました。

島しょ部に生きる希少種にとって、移入種は大きな脅威ですが、マダガスカルも例外ではありません。

「ワオキツネザル」の保護の取り組み

ワオキツネザルの推定個体数は現在2千頭あまりで、さらに減少する傾向にあり、何か手をうたなければ近い将来絶滅してしまうかもしれません。

キツネザル科に属する全ての種は、希少種保護の国際的な取り決めである「ワシントン条約」の付属書Iに掲載されています。

よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要ですが、違法取引は無くなりません。

そのほか、ワオキツネザルを絶滅の危機から救うための取り組みをご紹介していきます。

保護区の指定と管理

ワオキツネザルの生息に適した森林は、国立公園や保護区、個人が経営する私設保護区として守られています。残された良好な生息地を直接的に守ることは、ワオキツネザルの保護活動の基盤です。

保護区内では、動物の捕獲や樹木の伐採は禁止され、監視員が違反行為がないかどうか保護区内を巡回します。また、巡回にあわせて、キツネザルの個体数の傾向や行動、生息地の状況も確認することが可能です。

地区によっては、地域住民によるコミュニティパトロール隊が作られ、生態学者や大学の学生と協力している場合もあります。

また、航空機を使っての監視は、保護区周辺の焼畑農業を効率よく発見し、減少させるのに効果的です。

一方で、一部の保護区は観光客に開放され、観光資源としての利用と両立させながら保護区経営をしてきました。ただし、これまで日常的に行われてきた、観光客によるキツネザルへの餌やりは、生態への悪影響を考慮して禁止されるようになっています。

監視パトロールなどによる適切な管理の結果、保護区では森林破壊率が減少し、ワオキツネザルをはじめとするキツネザルの個体数が増加しました。

マダガスカルの森林は断片化が進んでおり、小規模な保護区を設定して丁寧に管理していくことが、今後もさらに重要になっていくでしょう。

森林再生

ワオキツネザルは食糧供給源として森林に依存していますが、森林もまたワオキツネザルの存在を必要としています。というのも、キツネザル類は森林の中を広範囲に移動しながら餌を探すため、植物の種子散布や花粉媒介者として機能しているからです。

キツネザルの餌となる植物の種子は、キツネザルの腸管を通過すると発芽率が高まりよく成長するという特性があります。この性質を利用し、キツネザルの糞から種子を集めることで、600万本以上の木を植えることができました。

残された野生個体群の遺伝的多様性を確保するためには、森林再生によって複数の保護区を結び、個体群同士の交流を確保する必要があります。

また、大規模な森林伐採を引き起こしているのは、持続不可能な方法による木炭生産です。木炭の使用を減らすため、燃料効率の良い調理用ストーブを提供し使用方法を普及する取り組みも実施されています。

今後も地域住民の理解と協力を得て、森林再生が順調に進むことが望まれます。

傷ついた個体の保護

キツネザル救助センターは、違法取引から救出されたキツネザルをリハビリし保護区に戻す活動をしています。

傷ついたキツネザルが保護されても、自分で餌を探す能力を取り戻せなければ、野生に復帰できません。森に放すことのできない個体は生涯にわたって飼育されるため、センターは常に飽和状態です。

リハビリを待つキツネザルを受け入れられるよう、収容能力を高める取り組みが進められています。

あまりにも多くのワオキツネザルが、自然の生息地から連れ去られ続けてきた状況で、違法法取引の撲滅が喫緊の課題です。

地域社会の支援

地域社会が、森林伐採や違法捕獲に頼らずに生計をたてられるように、安定した収入源を確保するための支援が実施されています。

キツネザル類のエコツアーなど、観光産業はマダガスカルで最も重要な外貨獲得源です。保護区において、観光と野生生物保護を両立させる管理手法の蓄積が求められています。

しかし、世界的なパンデミックにより観光客は激減し、観光に依存しない持続可能な生計の方法の模索が必要となりました。

土壌からの食用塩の生産、食用魚の養殖と水耕栽培を組み合わせたアクアポニックス、養蜂などが新たな地域産業の一例です。

現地の人々が安定した暮らしを送り、野生生物に対して配慮できる最低限のゆとりをもつことも、希少種保護を進めるうえで欠かせません。

環境教育

ワオキツネザルの保護には、マダガスカルの地域住民が保護の必要性について理解し、ワオキツネザルと共存できることが重要です。科学的に正しい情報を広く住民に浸透させるためには、地道な環境教育を継続していくしかありません。

キツネザルの保護に関する教育小冊子の提供や映画の上映会、地域住民や小中学校と連携したワークショップなどが実施されています。

マダガスカルの自然におけるワオキツネザルの重要性についてはもちろん、捕獲や売買を禁じる規制や違法行為をしなくても生計を立てる手段なども、伝えるべきテーマです。

地道な啓発・教育活動によって、ワオキツネザル保護への理解と協力の輪が地域住民の間に広まっていくことが望まれます。

私たちにできること

日本からはるか離れたマダガスカルも海や大気でつながっているため、温暖化などの地球規模の問題の要因は私達の生活と無関係とは言い切れません。

日々の生活の中で無理なくできることとして、次のようなことが考えられます。

  • 石油由来の製品の利用を減らす
  • ものを無駄遣いせず大切に使う
  • 再生エネルギー由来の電力を利用する
  • 自家用車よりも公共交通機関を利用する
  • 地球温暖化について関心をもつ

また、ワオキツネザルの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも考えられます。代表的な団体をご紹介します。

ワオキツネザルは、北海道から沖縄まで国内50か所の動物園で飼育されているので、動物園を訪れた際はぜひ間近で観察してみてください。

本来の生息地であるマダガスカルの自然についても心配です。現地の人々の理解と協力によりワオキツネザルの森が健全に維持され、生息数が回復することを願ってやみません。

ワオキツネザルのことを知ることも、ワオキツネザルを守るための一歩です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。