オンセンクマムシは、緩歩動物門に属するクマムシの仲間です。
1937年に、スイス人線虫学者であるRahmが九州を訪れた際、長崎県の雲仙温泉の占湯の流れ出しの湯垢の中から発見されたとされています。
オンセンクマムシは、他のクマムシと同様に顕部に感覚毛を備えていますが、咽頭は真クマムシ目に似ているというところから、別種として記載されました。
しかし、オンセンクマムシを含め、他のクマムシについてもほとんどがシノニム(同一と見なされる種や属などに付けられた学名が複数ある場合の、それぞれの学名のこと)であるとも考えられています。
「オンセンクマムシ」の分布・生息地
オンセンクマムシは、長崎県の雲仙温泉の占湯の流れ出しの湯垢の中から発見されたのみで、それ以降はまったく確認されていません。
このことからも、温泉に適応した生態をしており、温泉性の生き物だと推測されます。
そこで、大規模な温泉ならば同じ水脈からいくつもの温泉が湧き出しているため、発見された水脈と同じ温泉での調査も行われましたが、発見にはいたりませんでした。
また、オンセンクマムシには黒色の眼点があることがわかっています。
地下水性の生き物は、眼を欠くことが多いため、オンセンクマムシ地下水性の生き物ではないことが示唆されます。
高温の地下温泉に生息するのはなかなか困難ですが、地下から流れ出した温泉水に棲む生き物や、温泉の浴槽や泉源から湯を引く溝の中からしられている生き物もいます。
こういったことからも、オンセンクマムシの生息地は、さまざまな可能性が考えられますが、一度しか発見されていないため、くわしいことについてはよくわかっていません。
「オンセンクマムシ」は本当にいたのか
オンセンクマムシは、模式標本を含め、標本は一つも保存されていません。
観察したのはスイス人線虫学者であるRahmのみで、それ以降は一度も確認されていません。
また、オンセンクマムシを記載した際の学術誌では、日本とドイツでほぼ同時に記載されています。
このように、二つの雑誌に同時に記載されるというのは異常なことで、内容についても疑わしい部分があったといいます。
このことからも、オンセンクマムシの存在自体が怪しいという研究者も少なくないようです。
しかし、1986年に、イタリアの小川から発見されたクマムシの仲間が、オンセンクマムシに類似した形質を持っていることがわかりました。
この発見により、捏造だとされていたオンセンクマムシも、存在確認が期待されるようになりました。
しかし、現時点では未だに発見にはいたっておらず、捏造だったのか、実際に存在したのか、未だに真実は不明のままです。