絶滅危惧種 PR

【シマフクロウ】特徴や生息地・絶滅危惧に至った原因を紹介!

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「シマフクロウってどんな鳥?」

「シマフクロウは、なぜ絶滅危惧種になってしまったの?」

環境省レッドリストで絶滅危惧種IA類(ごく近い将来野生における絶滅の危険性が極めて高いもの)に掲載されているシマフクロウ。

絶滅を回避できる方法があるならば、知りたいですよね。

最後まで読んでいただくとシマフクロウの特徴・生態・保護活動について、網羅的に情報を得られますので、ぜひ最後までご覧ください。

「シマフクロウ」とは

シマフクロウはフクロウ目フクロウ科シマフクロウ属に分類され、英語ではFish Owl(魚を食べるフクロウ)です。

全身は灰褐色の羽毛におおわれ、お腹には濃い褐色の縦縞がありますが、「シマフクロウ」の「シマ」は、しま模様のことではありません。

北海道が「蝦夷が島」とよばれていた江戸時代、「蝦夷が島」(しま)に住んでいるフクロウということで、シマフクロウとされました。

シマフクロウは、アイヌの人々に「コタン・コロ・カムイ」(村の守り神)としてあがめられ、大切にされてきた鳥です。

ここでは、シマフクロウの大きさや食べ物、ライフサイクルについてご紹介するのでご覧ください。

シマフクロウは世界最大級

シマフクロウは、全長(頭の先から尾の先まで)が70cm、翼開長(広げた左右の翼の先から先まで)が180cmで、世界的にも最大級のフクロウといえます。

翼を広げると畳の長さとほぼ同じなので、畳1枚が空に浮かんでいるのを想像すれば、シマフクロウの大きさがイメージできるでしょう。

シマフクロウの体重は3~4kgで、カラスの6〜8倍となっています。

このように、シマフクロウは存在感のある大きな鳥です。

シマフクロウは何を食べる?

シマフクロウの主食は、清流にすむサケ・ヤマメ・アメマスなどの魚です。

シマフクロウが子育てするために必要な餌の量は、20cm以上の大きさの魚が100平方メートルあたり30匹以上という調査結果があります。

基本的に動きがのんびりしているので、餌がたくさん無いと捕まえられないそうです。

夜行性ですが、子育て中は昼間も餌を取りに行き、ネズミやカエルなども食べます。

シマフクロウのライフサイクル

シマフクロウの親鳥は3月半ばに1~2個の卵を産卵します。

4月に卵から孵化したヒナは、6月ごろには巣から出て生きていくための術を身に着け、3~4年で繁殖できるようになっていくのです。

親離れしたシマフクロウは、子育てする巣・食べ物・休む場所の3つをそなえた自分の「なわばり」をもって、やっと一人前。

シマフクロウの寿命は、野生で30年、飼育下で40年とのことです。

天敵

体の大きなシマフクロウですが、天敵がないわけではありません。

親鳥が巣を留守にした隙に、巣の中の卵がカラスに持ち去られたり、ヒナがテンに襲われる危険があります。

また、巣から出て飛ぶ練習を始めたヒナがうっかり地面に落ちると、キツネに狙われることに。

親鳥でさえ、魚などの餌をねらって背後に隙がある時には、キツネの餌食になることがあるようです。

私達人間も「シマフクロウの姿を一目見たい」などの思いで近づきすぎると、シマフクロウを怖がらせ、子育てを邪魔してしまいます。

シマフクロウの羽角(耳ではないけれど、耳のように見える頭の羽)がピンと立っている時は、緊張したり威嚇したりしているサイン。

シマフクロウに会えるチャンスがあったら、刺激しないように気を配りたいですね。

「シマフクロウ」の分布・生息地

シマフクロウの分布は世界的にも非常に限られており、日本では北海道の一部だけです。

北海道の中でも、シマフクロウが暮らせる条件をそなえた森は多くありません。

シマフクロウが生きていくためには、巣づくりのための場所と十分な餌が必要だからです。

ここでは、シマフクロウの分布や生息地について解説していきます。

「シマフクロウ」の分布

かつては北海道全域にいたとされるシマフクロウですが、現状では北海道の一部とその周辺だけとなっています。

シマフクロウの分布は、現在は北海道の知床が中心で根室・釧路・十勝・日高にも点在し、国後島やサハリンにも生息しています。

中国とロシアの国境周辺にも分布していますが、こちらは亜種です。

北海道でも、滅多に出会えない希少な野鳥といえます。

「シマフクロウ」の住まいの条件

シマフクロウの巣には、大きな体が入る空間と、天敵や冬の厳しさから身を守る次のような条件が必要です。

  • 樹齢200年以上の樹洞がある太い木
  • 樹洞の大きさは、底面積1平方メートルで深さ10~80cm
  • 樹洞の入り口は、地面から高さ2~10mで南向き

ちょうど良い洞のある、樹齢200年以上の木はそう簡単に見つかるものではありません。

シマフクロウが森の中で好物件を見つけるのは、かなり難しいといえます。

「シマフクロウ」が生息できる森

シマフクロウは、ミズナラ、ハルニレなどの明るい広葉樹林と、トドマツなどの針葉樹林が混じっている森にすんでいます。

広葉樹と針葉樹が混じった森の中では、シマフクロウの姿は木の樹皮と同じような色なので、上手くカモフラージュできるのです。

もちろん、餌となる魚がたくさんいる豊かな河川が流れていることも必須。

アイヌの人々が「村の守り神」と呼んだことから、山の奥深くではなく人の生活(村)の近くの森に生息していたことが分かります。

「シマフクロウ」が絶滅危惧種となった理由

シマフクロウが絶滅危惧種となったのは、シマフクロウが生きていける環境が減ってしまったことが原因です。

これまで説明してきたように、シマフクロウが生きていくため、子育てするためには十分な魚が必要です。

また、シマフクロウが巣作りできる場所は、非常に限られていることが想像できます。

シマフクロウの生存には、樹齢数百年の樹がある豊かな森と、魚がたくさんすむ豊かな川のセットが欠かせません。

過去の要因

明治時代に北海道の植民地化が始まってから、平地と山の間にあった広葉樹林のほとんどが田畑に変わっています。

特に1950年頃からの日本の高度経済成長期には、北海道は大規模に開拓されていきました。

今の北海道の広々とした風景は、この頃に森が伐採されて宅地や畜産のための牧草地などに変えられていった結果です。

また、人の暮らしを土砂災害から守るために砂防ダムが作られましたが、川の流れの落差が大きいため、魚が上流に移動できなくなってしまいました。

シマフクロウの住むところも食べる物も減っていったのです。

現在の要因

今でも開発が無くなったわけではなく、宅地開発のほか太陽光発電所・風力発電所の建設のために、シマフクロウが好む豊かな森が失われるリスクがあります。

持続可能な未来のための発電所が、豊かな森を壊して建設されては本末転倒ですよね。

また、シマフクロウは、上流で魚が取れないと下流に飛んでくるため、電線による感電や交通事故で死んでしまう例もあります。

さらに、釣り人やカメラマンが、シマフクロウの子育てを妨害してしまっている地域もあるそうです。

「シマフクロウ」の保護の取り組み

明治時代には、北海道全域に1000羽ほどいたとされるシマフクロウ。

一時は70羽ほどにまで減ってしまい、行政と民間が協力して保護の取り組みが始まりました。

希少な野生生物を守るためのいろいろな法律によって、シマフクロウも保護の対象になっています。

1971年 国の天然記念物に指定
1984年 保護増殖事業の開始
1993年 国内希少野生動植物種に指定

ここでは、シマフクロウを保護するための取り組みについて紹介します。

森を残すこと、森を作ること

シマフクロウが生息できる条件をそなえた豊かな森、今ある森をなるべく多く残さなければなりません。

寒さの厳しい北海道では、一度森が失われてしまうと元に戻るまでに百年単位の時間がかかってしまうからです。

国はシマフクロウの主な生息地である知床を国指定知床鳥獣保護区とし、特別保護地区では工作物の設置・水面の埋め立て・森林の伐採などを禁止してきました。

また、財団法人日本野鳥の会は、土地の持ち主と協定を結んだり森を買い取ったりして、シマフクロウのすむ森を野鳥保護区にしています。

シマフクロウの生息地を広げるためには、森と森の間にシマフクロウが移動できる緑地を作って森と森をつなぐことも大切です。

失われた森林を取り戻すために、数百年後に豊かな森ができることを思い描いて植樹を進めている場所もあります。

シマフクロウの巣箱の設置

シマフクロウのための巣箱が、これまでに200個以上設置されています。

シマフクロウが巣作りできるような、洞のある樹齢200年以上の巨木が非常に少なくなっているからです。

樹洞の代わりになる巣箱は、ドラム缶1本分くらいの大きさで強化プラスチック製で一個10万円以上。

キツネやテンが巣の中に侵入するのを防ぐため、巣箱の下の幹につるつるしたトタンを巻く工夫もされています。

自然の巣と形や素材が違っても、大きさが十分なら気にしないで使ってくれるようです。

餌となる魚の「生けす」の設置

「生けす」とは、シマフクロウの餌となる魚を放した「生けす」のことで、これまで10か所が設置されています。

シマフクロウが子育てするために必要な魚の量は、大きさ20cm以上の魚が、100平方メートルあたり30匹ほどの量です。

シマフクロウのすむ森の魚類調査をして、餌の量が十分でないことが分かった場合には「生けす」を作って魚を放っています。

それでも、餌不足で繁殖に失敗するつがいもあるようです。

本来、野生生物への餌付けは避けるべきですが、魚類調査の結果に基づいて必要最小限の手助けをしています。

私達にできること

2021年には160羽70つがいが確認され、西へと分布を広げています。

少しずつ数を増やしているのは明るいニュースですが、野生絶滅したトキが400羽にまで回復していることと比べるとまだ道半ばの印象です。

私達がシマフクロウの保護のためにできることをご紹介します。

  1. シマフクロウの生態について知る。
  2. ゴミのポイ捨てをやめる。
  3. 繁殖期はそっとしておく。
  4. シマフクロウの保護をしている団体に寄付をする。
  5. 巣箱かけや植樹などの活動に参加する。

これからもシマフクロウの数が増え、かつて村の守り神として人の生活に寄り添っていた頃のように、豊かな森が取り戻されることを願ってやみません。

ここまで、シマフクロウの特徴・生態・保護活動について、解説してきました。

シマフクロウの生態を知ることも、シマフクロウを守るための第一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。