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【マレーセンザンコウ】特徴や生息地・絶滅危惧に至った原因を紹介

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「マレーセンザンコウはセンザンコウの仲間?」

「センザンコウってどんな動物?」

「野生のマレーセンザンコウはマレーシアにいるの?」

センザンコウの仲間は、全身を硬い鱗で覆われた哺乳類です。

あまりなじみのない動物かもしれませんが、センザンコウは世界で最も密猟されている哺乳類といわれています。

マレーセンザンコウは東南アジアの各地に生息するセンザンコウの一種です。

マレーセンザンコウは、IUCN(国際自然保護連合)レッドリストでCR(Critucally Endagered:近絶滅)に記載されており、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いとされています。

最後まで読んでいただくと、マレーセンザンコウの特徴・生態・生息地・保護活動について広く知ることができますので、ぜひご覧ください。

「マレーセンザンコウ」とは

マレーセンザンコウはスンダセンザンコウとも呼ばれ、哺乳綱燐甲目センザンコウ科センザンコウ属に分類される動物です。

センザンコウはアジアとアフリカ大陸に8種存在し、なかでもマレーセンザンコウはアジアに最も広く分布しています。

哺乳類であるにも関わらず、センザンコウの全身を覆っているのはケラチン質でできた厚い鱗です。

トラやヒョウなどの外敵から身を守るために、センザンコウはボールのように丸くなって傷つきやすい腹部を隠します。

このユニークな防御態勢は捕食者から身を守るためには役立ちますが、人間に捕獲されやすく、センザンコウ8種全てが密猟のために絶滅危惧種となっています。

「マレーセンザンコウ」の特徴

マレーセンザンコウは頭胴長40〜65cm・尾長35〜56cm・体重約10kgで、オスはメスよりも大きくなります。

マレーセンザンコウの体は列状の鱗と繊維状の毛で覆われ、アジアに生息するほかのセンザンコウに比べ背中の鱗の列が少なく、尾が長いのと前肢の爪が短い点が特徴です。

マレーセンザンコウの足の皮膚は粒状で、前足には肉球があり、アリ塚を掘るための厚くて強力な爪を持っています。

発達した嗅覚でアリの巣を探し、25cmにも達する粘着性のある舌で餌をなめとりますが、視力は良くありません。

マレーセンザンコウは歯をもたず、突起のある胃壁と胃の中に取り込んだ小石によって食べた物を砕いて消化します。

このように、マレーセンザンコウをはじめとするセンザンコウの仲間は、哺乳類とは思えないほどユニークな特徴をもつ生きものなのです。

「マレーセンザンコウ」の暮らし

マレーセンザンコウは主に夜行性で、夜間に地面や樹上のアリの巣を探し、日中はシダなどの植物の上・地面の穴・倒木の間・岩の空洞に掘った巣穴などで眠ります。

マレーセンザンコウは森林や湿地に生息し、木に巻きつけられる長い尾と爪を使って樹の上に登ることができ、泳ぐのも得意です。

メスは1歳で性的に成熟し繁殖のために大きな木の洞に巣を作り、約6ヶ月の妊娠期間を経て、1回の出産で1頭を出産します。

出産後、母親は3〜4か月の間子どもを尻尾の付け根に乗せて世話するそうです。

このようにマレーセンザンコウの暮らしには、餌となるアリが豊富に生息し、出産や休息の場として利用できる空洞をもつ古い木がある豊かな森林が欠かせません。
h3 「マレーセンザンコウ」の食性
マレーセンザンコウは食虫性で、主にアリ・シロアリやその幼虫を餌とし、1日に最大20万匹のアリを捕食するといわれています。

アリやシロアリの巣を探知するのに役立つのが、優れた嗅覚と聴覚です。

マレーセンザンコウは長く強力な前爪でアリ塚を掘り、長い鼻先を突っ込んで、長く粘着性の舌で餌をなめとって食べます。

マレーセンザンコウは、アリクイのように、アリを捕食するために都合の良い身体に進化した動物といえるでしょう。

「マレーセンザンコウ」の分布・生息地

出典:REGIONAL SUNDA PANGOLIN(Manis javanica)CONSERVATION STRATEGY

アジアに生息するセンザンコウの仲間4種のなかで最も広く分布しているのが、マレーセンザンコウです。

その生息域は、ミャンマーからタイ・ラオス・ベトナム・カンボジア・マレー半島・シンガポールを経て、インドネシアのスマトラ島・ジャワ島・ボルネオ島にまで及びます。

マレーセンザンコウの生息地は、海抜1,700mまでの原生林・二次林・アブラヤシなどのプランテーションです。

マレーセンザンコウは樹冠がしっかりと覆われた森を好み、最も高密度で生息しているのは原生林であると報告されています。

原生林には巣穴や休息に適した空洞をもつ樹齢を重ねた木が多く存在するため、マレーセンザンコウの生息に適しているのです。

なお、マレーセンザンコウは用心ぶかく、単独で生活し夜行性であることから確認が難しいため、生息数に関するデータはシンガポールを除いてほとんどありません。

「マレーセンザンコウ」が絶滅危惧種となった理由

センザンコウは世界で最も違法取引されている哺乳類であり、毎年約10万頭のセンザンコウが野生から密猟されています。

中国やベトナムではセンザンコウの肉は珍味として消費され、高級レストランで扱われる食材の1つです。

また、センザンコウの鱗は漢方薬の原料とされ、皮膚病・血液循環の促進・乳分泌の改善・癌の治療などに効能があると信じられています。

センザンコウの鱗は人の爪と同じケラチン質であり、西洋医学の観点では効能が確認されないにも関わらず、2000年代に入っても中国などに向けた密輸は止まる気配がありません。

さらに、センザンコウの革は皮革製品の材料として利用され、希少性から価値が高いとされています。

アジア地域において、2001~2018年の間に28万頭以上のセンザンコウが密売された可能性があると推定されました。

密輸目的の狩猟圧がマレーセンザンコウの減少要因として注目されがちですが、森林伐採・農地開発・採掘・ダムや道路建設による生息地の破壊も無視できない要因です。

なお、道路建設など森林奥地まで交通網が発達することで、密猟や密輸がしやすくなるという問題もあります。

センザンコウの生息数は不明ですが、毎年膨大な数の個体が違法取引の犠牲となっていることは紛れもない事実なのです。

「マレーセンザンコウ」の保護の取り組み

世界で最も密猟されている哺乳類であるセンザンコウのなかでも、アジアに広く分布するマレーセンザンコウの保護について、国際的な関心は高まっています。

2016年にはセンザンコウ8種はすべて「ワシントン条約」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の付属書Iに掲載されました。

よって、商業目的のための国際取引は全面的に禁止、学術目的の取引には輸出入国双方の政府が発行する許可証が必要です。

なお、「種の保存法」(絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法律)に基づく国際希少野生動植物種のリストでは「マライセンザンコウ」という種名で記載されています。

また、マレーセンザンコウはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでCR(Critically Endangered:近絶滅危惧)に掲載され、生息域内のほとんどの国で法律によって保護されています。

マレーセンザンコウ保護戦略

IUCNセンザンコウ専門家グループ(Conservation Planing Specialist Group)は、2018から10年間を対象とするマレーセンザンコウ保護戦略を策定しました。

そのなかで掲げられている目標は次の通りです。

  • 目標1:消費者の行動を変え、センザンコウを材料とした製品の需要を減らす。
  • 目標2:政策と法執行を強化して違法取引に対抗する。
  • 目標3:保全の取組みに地域コミュニティをまきこむ。
  • 目標4:マレーセンザンコウの重要な個体群が生息する地域を特定し保全する。
  • 目標5:調査によりマレーセンザンコウの生態と行動を解明する。
  • 目標6:マレーセンザンコウの救出・リハビリ・野生復帰のシステムを確立する。

マレーセンザンコウの生息域は複数の国にわたり、保護区に指定されていない地域や開発された森林の周辺などにも及びます。

したがって、マレーセンザンコウの保護を実現するためには、地域住民なども含め多様な利害関係者の協力を得る必要がありますが、関心の度合いは地域によって差があります。

目標を達成するためには、地域コミュニティの暮らしの改善や国際的な犯罪組織の撲滅など、多岐にわたる分野で地道な取り組みが必要です。

ベトナムでの取り組み

民間の組織であるSAVE VIETNAM’S WILDLIFE(SVW)は、世界で最も多くのセンザンコウを救出したとして2021年にゴールドマン環境賞を受賞しました。

SVWはベトナム国内でセンザンコウの生息範囲全体に密猟対策チームを派遣し、マレーセンザンコウの違法な捕獲に対抗しています。

SVW は、2014年の設立以来1,651頭以上のセンザンコウを保護し、その内60%近くをリハビリして野生復帰させているという成果も大きな功績です。

野生復帰させた地点周辺に設置したカメラによる調査では、野生復帰したセンザンコウが繁殖にも成功していることが分かっています。

この団体が蓄積してきた知識や技術などは、マレーセンザンコウを保護する他の地域の活動にも活かされていくべきでしょう。

シンガポールでの取り組み

民間の組織であるMandai Natureは、2013年にIUCN(世界自然保護基金)のセンザンコウ専門家グループの協力を得て、世界初のセンザンコウ会議をシンガポールで開催しました。

この会議には14か国から40人の自然保護活動家が出席し、センザンコウ8種すべての減少と保全活動の必要性について合意されています。

また、Mandai Natureはシンガポール野生生物保護区 (WRS)と協力して、生息地内外で120頭以上のセンザンコウを保護してきました。

保護されたセンザンコウのほとんどは治療・リハビリの後、野生に戻されています。

保護活動を通し、生後1.5か月の赤ちゃんを人工飼育し野生復帰させた技術や、飼育下での餌の開発などにも貢献中です。

今後も、マレーセンザンコウの保護に関するノウハウの蓄積と、国境を超えた関係機関との協力が期待されています。

私たちにできること

マレーセンザンコウは日本の野生動物ではなく、マレーセンザンコウを飼育している動物園も現時点では国内にありません。

しかし、同じくアジアに生息するセンザンコウの仲間であるミミセンザンコウは上野動物園で飼育されているので、間近で観察することが可能です。

上野動物園の最新情報は公式サイトでご確認ください。

センザンコウが同じアジア圏で漢方薬として珍重され、密猟の原因になっていることは身近で深刻な問題といえます。

アジア諸国に旅行する際には、「野生動物の違法取引は許されない」ことを意識するとともに、周囲にも広めていくことが大切です。

また、国外でマレーセンザンコウの保護活動をしている団体に寄付をしたり、活動に参加したりすることも考えられます。

代表的な団体は次のとおりです。

マレーセンザンコウの違法取引が一日でも早く根絶されることを願ってやみません。

マレーセンザンコウの生態や生息地について関心をもち情報を得ることが、マレーセンザンコウを絶滅の危機から救う第一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。