ニホンカワウソは、イタチ科に属するカワウソの一種です。
1979年に目撃されて以来その姿を目撃されていないため、現在は絶滅種となっています。
ニホンカワウソの生態・特徴
生態
川では主に魚やエビ・カニなどを捕り、陸上では鳥類や野ネズミなどを主食としていました。
1回に食べる食事の量は1kg程度で、可愛らしい見た目とは裏腹に大食漢です。
しかし、消化する時間が2時間と短く、食事を求め1日に約10kmも移動する個体もいるそうです。
夜行性のため狩りは夜に行い、昼間は木の根元の穴や岩の割れ目、茂みなどに休む所を作り休息していました。
性格としては縄張り意識が強く、ほとんどが単独で生活をし、糞を使って川原や石の上にマーキングしていたそうです。
糞のマーキングは同性にしか適応されないため、雌と雄のマーキング場所が重なる場合もあったとか。
繁殖期は10月~11月頃で、水中交尾をし、12月~1月頃に出産を迎えます。
1度の出産で1匹~4匹を出産した後、母親が子供に餌の捕り方、泳ぎ方などを教え、独り立ちできるよう訓練をします。
子どものカワウソは頻繁に水の中で遊んだり、追いかけっこをすることがあったようで、この行動を通して狩りの技術を学んだそうです。
自分が狩猟した獲物を岩の上に並べる習性があり、お供えをしているようにも見えたため、日本酒の獺祭が生まれています。(獺はカワウソと読む。)
身体的特徴
イタチ科であるニホンカワウソは、体重が5kg~10kgとかなり重たいです。
水中生活において体が大きいほうが体温を維持しやすいため、このように重く進化したと考えられます。
また、毛皮の構造も体の熱を逃さないような作りとなっていて、短く細かい毛が二重構造となり密集して生えています。
二重構造となっているため、皮膚が直接濡れないようになっており、体温を封じ込める仕組みです。
水から出た後は、体温を逃さないように川岸の草などで体を拭く習性があり、ペットとして飼われているカワウソの動画などを見て知っている方も多いと思います。
水中で生活するため、長い尾と短い足を持ち、胴長の体つき。頭胴体は約65cm~80cmで、筋肉質の尾は約35cm~60cm程あります。
雄よりも雌のほうが頭胴体や尾も、短いとされ、体色は背中側は暗褐色で腹部は淡褐色です。
泳ぎに関しても考えられた体をしており、脚に付いている水かきは、手先で泳ぐのではなく、体を使い泳ぐために役立っています。更に骨は浮力を減少させるために、密度が高く、とても硬い。
視覚と触覚だけを使って狩りをするのではなく、水中の匂いを嗅ぐこともできるという証拠まであります。
声帯が発達しており、警告・挨拶・交尾などの基本的な鳴き声に加え、最大12種類もの鳴き声を発する事ができます。
ニホンカワウソの分布・生息地
中国から全世界へ
ニホンカワウソの祖先は、サイモゲール・メリルトラという中国南部に生息していた巨大カワウソであり、約600万年前には既に存在していたと記録があります。
その後、今日知られているカワウソとなり、日本北部から北太平洋を横断し、メキシコまで広く分布した後、ヨーロッパのほうまで生息地を広げていきます。
ヨーロッパにて生息しているカワウソは、ユーラシアカワウソと呼ばれ、ニホンカワウソはユーラシア全域に分布するユーラシアカワウソの亜種である。
ユーラシアカワウソは最も広く分布しているカワウソの種であったので、アジア・アフリカにも分布。
こうして分布した際に、日本に上陸したカワウソがニホンカワウソだと考えられており、これは約127万年前の出来事です。
生息地
ニホンカワウソの骨が全国各地の縄文時代にあった貝塚から出土されている記録があり、このことから分かるように、ニホンカワウソが太古から存在が確認されています。
その後の室町時代では、カワウソが塩辛にされていたという資料も残っています。
明治時代初めは日本全国の河川にて広く分布し、生息していたと記録があり、明治の中頃は、東京都の荒川などでも発見されています。
しかし1930年頃になると、兵庫・和歌山・京都・長野などに少数が分布するまでに減少していき、そこから1973年に生息が確認されなくなるまで、数回のみ四国で発見されただけです。
真水がないと生きていけないため、主な生息地は真水のある河川・湖沼・海岸などで、季節によって生息する場所が異なるとも言われています。
冬は海岸線の磯場を獲るために磯場付近に生息し、夏はアユを求めて河川に生息していました。
ニホンカワウソの絶滅した原因
人間によって絶滅したニホンカワウソ
室町時代以降、ニホンカワウソは肺結核を治す薬として存在を知られ、多くのカワウソが捕獲されます。
平安時代には、ニホンカワウソの毛皮が良質だということが広まり、高級品として狩猟されました。
また、二重構造の毛が防寒に優れているとされ、更に人気が高まります。
ヨーロッパでは、カワウソを高級品として扱うブームが爆発しており、日本はヨーロッパへカワウソの毛皮を輸出。
カワウソの狩猟は昭和の初めまで続き、このことを機に個体数がかなり減少したといいます。
1906年には900頭近い捕獲数があったのにも関わらず、1916年にはわずか7頭しか捕獲されませんでした。
このことを踏まえて1928年にとうとう捕獲が禁止となりますが、地方にはこの状況が伝わっていなかったために、すぐに狩猟が途絶えることはありませんでした。
そして、この頃から大規模な河川流域の開発、農薬や工場廃水の垂れ流しによる水の汚染、漁業の発達などによりカワウソの生息地の減少が加速。
明治時代に起きた水質汚染の「足尾銅山鉱毒事件」以降、アユの大量死が起きます。
山林が荒れ、土砂流出や洪水が起こり、まず初めに被害を受けたのは川で生息するカワウソであったと想像できます。
また、漁業が盛んになって以降、漁業の邪魔になるとされ撲殺されたこともあったようです。
このように状況が悪化しているにも関わらず、日本は高度経済成長期に突入し、水質汚染はさらに悪化。
また、土地開発により交通の量が多くなったことで、交通事故などで命を落とすカワウソもいました。
1965年、国特別天然記念物に指定され、1979年に高知県での生息が発見されてからの30年以降、姿が見られないという理由で2012年に絶滅したことを環境省が発表。
ニホンカワウソは絶滅してしまったが、その他の生き残っているユーラシアカワウソなども絶滅危機にあるといいます。
近年、ペットとしてカワウソを飼う人々が急増している中で、密輸によって過剰にカワウソを取引きしているケースが相次いで起こっています。
ニホンカワウソの生き残りの可能性
環境省は、2012年にニホンカワウソを絶滅種としてみなしたが、これには少し疑問が残ります。
本来、絶滅種というものは、最後に姿が見られて以降その後50年経過しても、再び姿が見られない場合に絶滅種と認定されます。
ニホンカワウソの場合、1979年に最後の姿を目撃された後に、2012年に絶滅種とされたが、この間は33年しか経っていないのです。
また、近年数々の場所でカワウソではないか?という目撃証言があり、ニホンカワウソは絶滅していないだろうと考え、リサーチしている人々も居ます。
Japan otter club
大原信明さん率いる、高知県にてニホンカワウソの調査を続けている人々がいる。
大原さんらは、2016年7月に偶然にもニホンカワウソらしき生物を見たという。
そこから2020年5月に、目撃調査を公開するまでの4年間、大原さんらは数々のリサーチを重ねたという。
目撃した場所の周辺の状況を調査すると、数々の巣穴を発見することができたり、目撃された小川には人通りが少ないことからも信憑性が高まった。
2020年5月には、赤外線カメラで撮った映像にカワウソらしき姿が映っていることが分かり、公表に踏み切ったという。
目撃されたカワウソの種類は具体的な証拠がない限り不明であり、ユーラシアカワウソなど別の種類のカワウソという可能性もある。
けれどもこれまで四国にて、ニホンカワウソが目撃されることは多々あったころからも、今回の高知での発見は、もしかしたらニホンカワウソかもしれないということだ。
現在大原さんらは、ニホンカワウソの絶滅種というレッテルを覆すためにも、数々の証拠を集めているという。
ニホンカワウソ見つけ隊
たいちゃんという方が個人的にニホンカワウソを調査している。
絶滅宣言の際に、ショックを受けたことがきっかけで、個人的に調査を始めた。
2019年の9月に、高知県の磯場を調査していた際、カワウソの糞が岩の上に落ちていることを目撃した。
しかし、現在ニホンカワウソの証拠を鑑定できる機関が無い状況であるため、試行錯誤した後に時間が経過してしまった。
その結果、DNAの劣化によりこの糞がニホンカワウソのものかは迷宮入りとなってしまったという。
その後、2020年の9月に高知県の海岸にて調査をしていたところ、カワウソではないか?と思われる目撃情報を取得した。
何かが水面に顔を出したという目撃情報は、詳細を聞けば聞くほど、ニホンカワウソの特徴と一致していたらしい。
そして現在も、その情報がニホンカワウソだという決定的な証拠を探すために、ニホンカワウソの調査を続けている。
ニホンカワウソは絶滅したと考えているが、生き残りが確認されているカワウソの保全に取り組んでいる機関がある。
日本アジアカワウソ保全協会
日本アジアカワウソ保全協会は、2019年に設立された非営利組織である。
ここでは、現在生き残っているカワウソの調査や保全に力を注いでいる。
具体的には、生き残っているカワウソの生息調査や、カワウソ保全を広めるためのワークショップの開催、世界中にいるカワウソ研究者らの情報交換など、その他多岐に渡ってカワウソを守る活動をしている。
また、現在、コツメカワウソをペットとして飼うにあたっての密輸が大きな問題となっているため、正しい情報を広めようと活動している。
保全活動の支援のために支援募金も募っている。