ウサギワラビーは、有袋目カンガルー科に属する、小型のカンガルーの仲間です。
体長は約50cm、尾の長さが30cmと、体に対して長い尾を持っています。
毛は黒、茶、黄色が混ざっており、腹部は灰色がかった白色をしています。
夜行性で、主に単独行動をしていたといわれています。
昼間は叢でじっとしていることが多いようですが、びっくりしたときなどに1.8メートル近くまでジャンプしたという記録もあるようです。
個体の大きさと、このジャンプするという特徴から、「ウサギワラビー」という名前が付けられたと考えられています。
ウサギワラビーを含む有袋目の動物は、生まれてすぐに母親のお腹にある袋の中に潜りこみ、約2か月は袋の中で生活をするという特徴をもっています。
「ウサギワラビー」の分布・生息地
ウサギワラビーは、オーストラリア東南部の、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州の内陸部、またマレー川流域などに生息していました。
開けた平原、草原を好んでいたといわれています。
しかし、1889念にニューサウスウェールズ州で採集されたメスの個体を最後に、その後の目撃情報はなく、1938年には絶滅したと考えられています。
「ウサギワラビー」が絶滅した原因
なぜウサギワラビーが絶滅に追い込まれてしまったのか、詳しい原因はわかっていません。
ですが、主な原因として考えられるのは、生息地の減少であるといわれています。
オーストラリアでは、集約農業という、一定の面積の土地に多量の資本、労働をつぎ込み、土地を有効に利用する農業形態が行われています。
農地開拓のために、ウシや羊が移入され、草原が踏みつけられたという説もあります。
こういった人間の移住により、土地が開拓されたことにより、ウサギワラビーの生息地である草原や平原が減少したと考えられます。
また、人間により、ディンゴ(タイリクオオカミの仲間)やキツネ、猫などの天敵が持ち込まれ、捕食されてしまったことも原因の1つであると考えられます。
「ウサギワラビー」の生き残りの可能性
ウサギワラビーは、残念ながら1889年に採集された個体を最後に、記録が残っておらず、IUCNのレッドリストにおいても絶滅と記されています。
よって、生き残っている可能性はかなり低いと考えられますが、人間の目の届かない場所に生息域を変えて、ひっそりと生き残っている可能性も0ではありません。
同じウサギワラビー属のコシアカウサギワラビーは、1990年代に絶滅したといわれていましたが、現在はオーストラリア南西部のみに生息しており、IUCNのレッドリストにおいてはVU(脆弱な種)と位置づけられています。
現在、オーストラリアでは様々な団体が保護活動を行っており、国や自治体だけでなく、民間でも様々な活動が行われています。
その中の一つの、ニューサウスウェールズ州の「WIRES」という団体は、メンバーのほとんどがボランティアとして活動している、国内最大の野生保護団体です。
約2000人以上がメンバーとなっています。
こういった各団体が、絶滅してしまった生き物の調査および、現在絶滅の危機にさらされている生き物の保全活動として、野生動物の救助や介護、また野生動物に関する情報提供を行っています。