ジョンブルクジカは、鯨偶蹄目シカ科に属するシカの仲間です。
1930年代に、ベルリン動物園で死亡したのを最後に、絶滅したとされています。
非常に希少性の高い種で、これまで動物園で飼育された個体は20頭にも満たなかったとい
われています。
体長1.8m、体高1.2m、体重は170kg~280kgとされており、シカ科の中でも大型です。
シカの仲間は、雄の角が特徴的な動物ですが、ジョンブルクジカは、その中でも角の枝の数が一番多いといわれています。
通常は約20本に枝分かれ、多い個体では33本の枝に分かれていたという記録も残っています。
体色は濃い茶色で、腹部は薄い茶色、尾の下の毛は白色をしています。
鼻先の手前、上あごにあたる部分に黒いライン状の模様があるのが特徴的です。
主に植物を食べる草食動物ですが、水生植物も食べることができます。
この特性を生かし、ヒョウやトラなどの外敵に襲われると、水中に逃げ込む習性があったようです。
一夫多妻制で、一頭の雄と複数の雌、その子供の群れで生活をしています。
「ジョンブルクジカ」の分布・生息地
ジョンブルクジカは、タイ王国中央部の低木、サトウキビ、長い草などが群生する湿原地帯に生息していました。
主にバンコクのチャオプラヤ川の周辺でよくみられ、植物が密集した森林地帯は好まなかったようです。
また、20世紀に入ってからは、個体数が減少し、絶滅寸前の状態が続き、タイ南西部にある「バクナンポー」という地域で、最後の群れが生息していたといわれています。
「ジョンブルクジカ」の絶滅した原因
ジョンブルクジカが絶滅した原因は、人間による捕獲と、生活環境の減少および変化であるといわれています。
ジョンブルクジカの特徴である、多く枝分かれをした立派な角は、鹿角トロフィーとしての需要が高く、多くのハンターたちがジョンブルクジカの捕獲にあたりました。
また、角が漢方薬に利用されたという説もあり、人間にとっての需要が非常に高かったということが推測されます。
ハンターは、ジョンブルクジカを水辺に追い詰め、身動きの取りづらい深いところへ誘導し、ボートや水牛に乗って捕獲したといわれています。
また、人口の増加により、19世紀後半のタイでは稲作が盛んになり、輸出を行うようになりました。
湿原地帯は水田として開発され、ジョンブルクジカの生息地が減少したことも絶滅した要因の一つであると考えられます。
「ジョンブルクジカ」が生き残っている可能性
ジョンブルクジカは、現在IUCNのレッドリストにおいて1930年代に絶滅したとされています。
他の国で生息するシカの仲間が、ジョンブルクジカと同種ではないかという説もあり、現在でもジョンブルクジカは絶滅していない考える学者もいるようです。
しかし、どれも正確な情報はなく、ジョンブルクジカはタイの国有種と考えられ、すでに絶滅していると考えられています。
また、1990年代に、タイの北部に位置するラオスに生息しているという情報があり、調査が行われていますが、残念ながら発見にはいたらず、情報の根拠もわかっていません。
しかし、今後もこういった情報がある可能性があるため、慎重に調査を進めていく必要があると考えます。