ある自然研究科は彼らの姿を見てこういいました。
「美しく、優雅なその姿をみたものは、誰もが自分のものにしたくなるだろう」と。
彼らにこう言わせしめたのは「ゴクラクインコ」。名前の通り浮世離れした美しい鳥です。
10羽に1羽は2~3日で死んでしまうほど弱く儚いにも関わらず、買い手が後を絶ちませんでした。
珍重されていたはずの彼らは何故、絶滅することになってしまったのか。
今回はそんな幻の鳥についてまとめていきます。
「ゴクラクインコ」とは
身体的特徴
ゴクラクインコの大きさは30㎝ほどで、青い尾羽を持っていました。
頭部と胸は青緑色の羽毛でおおわれ、背中は灰褐色、額は赤く、羽根には大きな赤い斑点がありました。
目の周りは黄緑色をしていたと言います。自然のものとは思えないほど、派手で鮮やかな見た目をしていたんですね。
生態的特徴
ゴクラクインコの生態として最も特徴的なのは、やはりその巣作りにあると言えるでしょう。
一般的な野生のインコは木の洞などに巣作りをしますが、ゴクラクインコは白アリの作った蟻塚を巣として利用する習性があったのです。
美しい容姿から一時ペットとして人気の出たゴクラクインコでしたが、人の手による繁殖にまで至らなかったのはこの特殊な習性のためでした。
そしてこれは彼らの絶滅にも大きく関与することになるのです。
つがいまたは少数のグループで行動し、その一日のほとんどを地上の草の実を啄んで過ごしていました。
「ゴクラクインコ」の分布・生息地
オーストラリアのクイーンズランド州から、北ニューサウスウェルズ州にかけて生息していたそうです。
「ゴクラクインコ」の絶滅した原因
ゴクラクインコの天敵と言えば、タカや肉食の爬虫類のみで、あまり多いとは言えませんでした。
しかし、人間や人間の持ち込んだ家畜によって彼らの生活は脅かされていったのです。
誰もを魅了する美しさを持つ彼らは、鑑賞・ペット用や、羽を目的に乱獲されました。さらに餌場である草地が牧草地や畑にかえられ、住む場所まで奪われたのです。
こうして野生のゴクラクインコは、1915年までには姿を消してしまいました。巣作りの特殊性から、飼育下の繁殖も望めない彼らは、1927年には完全に絶滅してしまったのです。
「ゴクラクインコ」の生き残りの可能性
1921年に発見された野生のつがい以来、生きて発見されたという情報はありません。
目立つ見た目の彼らですから、ひとたび姿が確認されれば話題になるでしょうし、そう言った話が出ていないあたり、完全に絶滅してしまったといってもいいでしょう。
まとめ
また、ある自然研究科はこうも言いました。
「こんなに美しい生き物を何の保護策もなく地上に存在せしめたのは、自然の神の浅慮である」と。
美しいものを自分のものにしたくなるのは、人間として当然の欲だと思います。
しかし、それとて一つの種を絶滅させてもいい免罪符にはなり得ません。
真の浅慮は、神か我々か。ゴクラクインコの絶滅は、行き過ぎた人間の欲の愚かしさを教えてくれているのです。